中国から日本にやってきて、歌舞伎町でキャッチを始めた李小牧は、ポーカーゲームにハマって1000万円の借金を背負う。だが、ある青年との出会いによって人生は大きく変わる。DOL特集「隣の中国人」第2回は、前回に続いて李小牧の“ジェトコースター”人生を追っていく。(ライター 根本直樹)
44人が死んだ歌舞伎町ビル火災の最中も
血眼で賭場に張りついていた
歌舞伎町史に残る、あの凄惨な事故が起きたのは、李が違法なポーカーゲームにハマり、1000万円の借金に追われている頃だった。
2001年9月1日午前1時過ぎ、一番街に建つ雑居ビル「明星56ビル」で火災が発生。そのとき李は、そのすぐそばで“キャッチ”をしていた。李は語る。
「いろんな意味で、忘れられない事件です。今、思い出しても、心臓がバクバク鳴り出し、体中がカーッと熱くなってくるの」
出火元はビル3階の麻雀喫茶。2階には風俗店が入っており、逃げ遅れた店の客と従業員ら44人が死亡する大惨事となった。出火原因は今も謎のままだが、当時から根強く囁かれていたのが“放火”説である。
「出火元の麻雀喫茶は、ただのゲーセンじゃない。違法な賭博ゲームの店ですよ。客は、普通のサラリーマンからヤクザ、シャブ中、風俗嬢までごった煮状態。いつも殺伐とした空気が漂っていて、負けの込んだ客が怒鳴ったり、暴れたりは日常茶飯事。火事になろうが、借金取りがこようが、ゲーム機の前に張りついているような客ばかりですよ。不良中国人も多数出入りし、私もよく通っていた。ちょっとタイミングがずれていたら、私も被害に巻き込まれたかもしれない。あのとき、すぐにピンときたの。麻雀ゲームで負けた客が火をつけたなって」