それなのに彼女は「いつまで待たせるつもりなの!」と逆上し、最終的には怒りを鎮められなくなって、夫婦の自宅に乗り込んできたというわけです。玄関先で夫は彼女に頬をビンタされ、急所をキックされ、ツバを吐きかけられても、ただただ土下座して謝り、許しを請うだけでした。
相次ぐ愛人からの嫌がらせ
絶望の淵に佇む妻の決断
千絵さんがいよいよ110番をしようとしたタイミングで、4人(夫、彼女、子ども2人)は姿を消したのです。もちろん、事件の日以来、夫は自宅に戻らなくなりました。また自宅に停めている自動車の車窓に小麦粉がまかれていたり、右前のタイヤ周辺にハイヒールで蹴飛ばしたような跡が残っていたり、不審なことが続きました。誰が犯人なのかは明らかでした。千絵さんは娘さんに危害を加えられるのを恐れ、不本意ながらも離婚に応じることを決めましたが、千絵さんが私のところへ相談しに来たのはそんな絶望的なタイミングでした。
「主人と別れようと思ったのは、今回の件だけじゃないんです。娘は失敗が続くと自傷行為をすることもあるので、落ち着いた環境で愛情を注いで育て、自分に自信を持てるようにしたいんです。でも、主人は自分の趣味を優先したり、娘につらく当たったり、大事なときに家にいなかったりして……主人がいる今の状況では、娘に落ち着いた環境を与えてやれないと前々から考えていました」
「妻より愛人」「障害を持った子より健常な子」「実の子より愛人の子」――。10年間連れ添ったにもかかわらず夫の選択肢は卑劣極まりなく、最低限の常識や倫理すら欠落しており、千絵さんは奈落の底へ突き落されました。「あんたの言いなりになんてならないわ!」と離婚を拒否するという選択肢もあったはずですが、千絵さんはあくまで娘さんのことを第一に考え、離婚に応じることにしたのです。ただ、娘さんを女手一つで育てていくには、どうしても先立つものが必要です。
「娘にはお金がかかるんです!」
千絵さんはそんなふうに嘆きますが、こうしたケースでは養育費の金額をどのように決めればいいのでしょうか。