「優れたリーダーはみな小心者である」。この言葉を目にして、「そんなわけがないだろう」と思う人も多いだろう。しかし、この言葉を、世界No.1シェアを誇る、日本を代表するグローバル企業である(株)ブリヂストンのCEOとして、14万人を率いた人物が口にしたとすればどうだろう?ブリヂストン元CEOとして大きな実績を残した荒川詔四氏が執筆した『優れたリーダーはみな小心者である。』(ダイヤモンド社)が好評だ。本記事は、書籍に収まりきらなかった内容を新たに書き起こしていただいたもの。今回は、リーダーが認識しておくべき「接待」の心得について論じていただいた。

接待交際費は立派な「投資」である

 ローコスト・オペレーションは組織を滅ぼす――。
『優れたリーダーはみな小心者である。』で、私はそう書きました。経営状況が悪化すると「ローコスト・オペレーション」と称して、とにかく「経費削減」を徹底することで利益を確保しようとする経営者がいますが、それでは組織はいずれ死に体に陥ります。

 利益は「経費を絞り込んで生み出すもの」ではなく、「世の中に提供する価値をより高め、より大きなリターンをいただくことで生み出すもの」です。ローコスト・オペレーションは縮小再生産しか生み出さないため、一時は数字が改善することはあっても、本質的な意味で経営状況を改善することはできない。むしろ、会社の成長を阻害して、組織を滅ぼす結果を招くのです。

 たとえば、接待。ローコスト・オペレーションにおいて、真っ先に標的にされる代表格です。しかし、これは非常に愚かなことだと思います。もちろん、「世の中に提供する価値をより高める」ことに繋がらない接待は単なるムダです。しかし、新たな価値を生み出すための接待、すなわち「攻め」の接待は生きたお金の使い方であり、立派な「投資」です。そして、投資した何十倍もの利益が生まれる可能性があるのであれば、その投資効果に見合った範囲内であれば、はっきり言って「いくら使ってもいい」のです。また、肩書の有無にかかわらず、接待は、いろいろな局面でたいへん有力な「活動の力」になるユニークなものであるのは紛れもない事実です。

 ただ、誤解してはいけないことがあります。