習近平の北京大学視察での「後継者」発言を軽視できない理由

北京大学創立120周年の訪問で
習近平が言及した「後継者」

「この機会を借りて、大学がどのような人間をどのように育成すべきかという問題に関して、各先生、学生たちと意見交換をしたいと思う。まずは私から明確な回答を提示したい。それは、我々の教育は徳・智・体・美が全面的に発展した社会主義の建設者、そして継承者(接班人)を育成しなければならないというものである」

 5月2日、北京大学創立120周年(5月4日)に際し、同大を訪問・視察した習近平総書記が、同大教師・学生との座談会の席でこう呼びかけた。継承者は中国語で「接班人」と表記する。

 ここでは深読みも、過度の解読も必要ないし、禁物だろうが、政権2期目に突入しても“慣例”に反して後継者を明らかにせず、かつ憲法改正を通じて“終身最高指導者”としての地位確保を理論的・制度的に可能にした習近平から出てきた「接班人」という言葉だけに、筆者としても反応・熟考せずにはいられなかった。

 習近平は続ける。

「社会主義の建設者と後継者を育成することはわが党の教育方針であり、わが国における各種大学にとっての共同使命でもある。大学は青年の成長や人材の育成に重要な役割を果たすべきである。社会主義の建設者と継承者を育成するというこの根本をがっちりと掴んでこそ、大学は自らの使命を果たすことができる、そして中国の特色ある世界一流大学を生み出すことができるのである」

 本連載でも検証してきたように、世界中が中国政治体制・イデオロギーの将来的方向性に注目する中、多くの中国研究者、企業家、世界市民が「政治の自由化・民主化なしに持続可能な経済社会の発展を実現できるのか?」という疑問を抱く中、中国共産党支配下にある中国はそれでも自らの“中国の特色ある社会主義”という道を突き進むであろう。そしてその傾向は(いつまで続くかわからない)習近平政権になってますます顕著になっていくのが必至であろうというのが筆者の現段階における基本的見解であり立場である。