外国人が日本に来て感動するものの一つが自動販売機。設置台数や技術の先進性は、世界でもトップクラスだ。しかし、海外に目を転じると、日本ほど自販機は普及していない現実もある。日本自動販売システム機械工業会の恒川元三氏に詳しく聞いた。(清談社 岡田光雄)

名実共に日本は
世界一の「自販機大国」

“ワオ、日本の自販機はなんてアメージングなんだ”
“私の住んでいる国には駅や商業施設にしか置いていないわ”
“まったく、機械のくせに俺の国の店員よりいい接客をしやがる”

 海外の反応サイトでは、しばしばこういった意見を目にするが、確かに日本ほど自販機が進化している国は他にはない。

世界一の性能を誇る日本の自販機だが、海外進出は苦戦している。世界でもトップクラスの進化を遂げている日本の自動販売機。しかし、海外進出は思いのほか苦戦しているという

 現在は事前に商品をアプリで購入しておいて、受け取りだけを実機で行うこともできる機種や、方言や外国語で話す機種も登場するなど、まさに世界トップクラスの進化を遂げている。

 日本自動販売システム機械工業会の統計では、2016年末の飲料自動販売機の普及台数は、247万4600台。報道によれば、年間の飲料の売上額は、2兆298億円にも上る。

 一方、海外での普及台数は、アメリカ296万2000台、欧州300万台、中国20万台、東南アジア・オセアニア12万台。単純な設置台数で言えばアメリカや欧州全体には及ばないが、人口比でみれば日本は世界一の“自販機大国”だ。

 日本で自販機が広く普及した理由はいくつかある。最初のきっかけは1964年、東京オリンピックの頃に当時の国鉄が券売機を導入し、100円硬貨が大量に流通したこと。その後、74年頃から日本特有の「ホット&コールド機」が普及し、これが消費者にウケた。

 日本は治安が良く、自販機を設置しても強奪や破壊されるリスクが少なかったことも普及を後押しした。店舗よりも自販機で売った方が利益率も良く、飲料メーカーは自社製品だけを陳列でき、市場調査もできるなど、販売側のメリットも大きい。

 しかし、恒川氏によれば、日本の自販機市場はすでに飽和状態にあるという。

「今や日本の屋内外の至る所に設置されており、自販機製造・飲料メーカーもこれ以上の伸びしろが望めない状況といえます。それに加えて、自動販売機をオペレート(設置・管理・メンテナンスなど)できる人手が不足しており、いずれにせよ台数を増やそうにも難しい状況です。そこで各メーカーは、海外に販路を求めるようになったのです」