シアトル・マリナーズによるイチローの選手としての幕引きが見事だ。それは、メンバーを組織から放出しなければならない時のグローバルスタンダードの5つのステップに、忠実にのっとっているからだ。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博)

炎上しがちな引退劇をポジティブに
マリナーズが見せた見事な手腕

イチローも満足いく実質引退劇となりました。
イチローのモチベーションがどこにあるのかを慎重に見極め、事前に対話を重ねることで、マリナーズはイチローを満足させる幕引きをかなえることができました Photo:USA TODAY sports/Reuters/AFLO

 誰しもいつかは引き際に直面する。任期や雇用期間を全うすることもあれば、全うする前に退かなければならないこともある。引き際は、当の本人にとっても大事だが、本人と契約したり雇用している組織にとっても、マネジメント力を試される局面だ。

 幕引きの仕方を間違えると、組織そのもののイメージダウンになるどころか信頼度を著しく低下させ、その組織の成長に悪影響を及ぼしかねない。サッカー日本代表監督だったハリルホジッチ氏の電撃解任劇は、日本サッカー協会の対応のまずさを露呈した(「ハリル氏激怒は当然、サッカー協会の最悪な対応を振り返る」を参照)。福田淳一事務次官のセクハラ発言問題による辞任を巡る財務省の対応も、世論の支持を得られなかった。

 しかし、このほど発表された、シアトル・マリナーズによる、イチローの選手としての幕引きの仕方は、これ以上ないほど見事だ。

 イチローは球団会長付特別補佐というポジションに就任し、外野、走塁、打撃をサポートし、選手とスタッフに対してアドバイスする役割を担うようだ。今シーズンはベンチ入りはできず、試合にも出ることができないが、これまで通りロッカールームを使い、他の選手とともにユニホームを着て練習ができる。

 来シーズンの試合出場は可能性がないわけではないといい、来春日本で行われるメジャーリーグ開幕戦にイチローが選手として出場するのではないかという臆測が、早くも飛び交っている。

 マリナーズによるイチローの選手としての幕引きが上出来なのは、過去にではなく未来に目を向けることに成功し、ポジティブな印象を与えることができている点だ。事実、報道されている内容は、「生涯契約」「特別補佐就任」という今後の役割を示すものが圧倒的に多い。メディアはショッキングなタイトルを付けたがるものだが、「実質引退を電撃発表」「今季絶望」などという見出しがあまり見当たらないことは驚きだ。