サッカー日本代表のハリルホジッチ監督が電撃解任された。日本サッカー協会が示している解任理由と解任プロセスを見てみると、ハリル氏が強い怒りを表明することは無理もない。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博)

田嶋会長の説明は
曖昧な表現だらけ

ハリル氏解任突然の解任通告に激怒し、来日して記者会見を開いたハリル氏。日本サッカー協会から何の指摘もなく、いきなり解任されたと怒りをぶちまけた Photo:Reuters/Aflo

 サッカー日本代表チームのヴァイッド・ハリルホジッチ監督が突然解任された。ハリル氏は、突然の契約解除通告に対して「なぜこの時期なんだ」「私をゴミ箱に捨てたようなもの」だと強い怒りを表明。「真実を探しに来た」と再び来日して先週、記者会見をしたが、不満解消の見通しはまったく立っていないようだ。

 サッカー日本代表の監督は、企業に勤めるビジネスパーソンと異なり、労働基準法で保護され、雇用が保証されているわけではない。ましてやプロスポーツの世界である。期待される成果を収められなければ、任期途中での解任も当然あり得る。

 ハリル氏の場合も、実績は十分であるとはいえなかった。ただし、その実績が解任すべき水準かどうかについては賛否両論があるようだ。

 しかし、それらの点を踏まえてもなお、今回の解任劇には違和感を覚えた。解任理由とプロセスに疑問があるのだ。

 パリのホテルに出向いて直接解任を通告した日本サッカー協会の田嶋幸三会長は、一連の報道で、経緯について述べている。「日本サッカー界に必要なものを植え付けてくれた」とハリル氏に敬意を表しながらも、「選手とのコミュニケーションや信頼関係が薄れたこともあり、総合的に評価して、この結果となった」と解任理由を述べ、「契約書にあることをしっかりと履行することが誠意ある対応」と、誠意を強調している。

 一見、整然とした言い分のように見えるかもしれないが、私はまず、「コミュニケーションや信頼関係が『薄れた』こと『も』あり」、という曖昧な解任理由に違和感を覚えた。

 信頼関係が「悪化して回復できない」、「看過できない水準に達した」などと言うならばいざ知らず、「薄れた」という穏やかな理由では、相手が納得しないのも無理はない。日本人同士であれば、配慮した言い方をしていると察してくれる人も中にはいるかもしれないが、外国人との間では、まず無理だろう。