「写真やインタビューを載せるだけで本が売れるアスリートは羽生結弦ぐらい」(大手出版社の編集者)

 そんな中、羽生と同じように、「必ずベストセラーになる」という選手が1人だけいる。平昌五輪スピードスケート女子500メートルの金メダリスト、小平奈緒(31)だ。自叙伝が出版各社で争奪戦になっているという。

「平昌でライバルの韓国の李相花を抱き寄せ、『がんばったね。私は尊敬しているよ』とねぎらったエピソードが示すように、自己啓発書を書くのに最適の人です。オランダ留学の際に、すぐに現地の言葉を話せるようになったほどの努力家でもある。心の持ち方を、まねしたい人は多いのではないでしょうか」(同)

 意外な特技も注目されている。

「料理です。2年間いたオランダで食生活が合わず、苦労したことから現在ではほぼ自炊です。ツイッターにも栄養を考え抜いた野菜中心の作り置きメニューが、写真付きで紹介されています」(女性誌記者)

 啓発書や料理本をぜひ読んでみたいが、小平が所属する長野県の相澤病院に聞くと、そこは当然ながら練習優先だという。

「出版の話はたくさん来ていますが、平昌以降、出席しなければならない行事が多く、一番優先させたい練習がなかなか思うようにできない状況です。本を書けるような時間は当分取れそうにありません」(病院広報企画室)

 日本スケート連盟宛てにも出版各社から企画書がいくつも来ているが、「本を書く時間はありません。すべてお断りしています」(連盟広報)という。

「タイムをどのくらい削れるのか挑戦したい」と、来シーズンに向けてすでに動き出している小平。書けばベストセラー間違いなしと言われるだけに、もったいない気もするが、2022年の北京冬季五輪での連続金メダルも期待されている。本を読めるのは、まだ先になりそうだ。

(週刊朝日・工藤早春)

週刊朝日2018年5月18日号より、AERA dot.より転載