フラット化する「賃金カーブ」

 少子化や高齢化は国レベルだけでなく、企業レベルでも生じている。すなわち、企業内で若年労働者に対する高齢労働者の割合が高まっている。その結果、かつてのような「年功序列賃金」の維持は一層難しくなっている。

 実際に「年功賃金」の性格は、景気循環とは独立して弱まっている。働き始めた年である「勤続年数0年」を100として、1970年から直近2010年までの「賃金カーブ」を描くと、明確にフラット化している(図表1参照)。

 特に勤続年数が10~14年より長いところで、賃金の上昇幅がかつてと比べてかなり小さくなっている。これは、少子高齢化が進む中、年功型の賃金制度を維持することが難しくなっていることを示すものだ。勤続年数を蓄積しても賃金の上昇度合いが低いとすれば、それは賃金の期待成長率(労働力に対する期待リターン)の低下につながる。

労働力の「デフォルト」リスク

 期待成長率の低下のみではない。失業率は景気に連動する「需要不足失業率」と、その他の構造的な問題に根差す「均衡失業率」に分けられる。たとえば、どんなに景気が良くても、労働力の需要と供給の間でスキル、年齢、地理などのミスマッチがあると、一定水準以上に失業率は改善しない。

 2000年代に入ってから、こうした構造要因を反映する「均衡失業率」が4%前後で高止まっている(図表2参照)。この一因として、高齢化が進む中、年齢を軸として労働力需給のミスマッチが生じている可能性が挙げられる。

「学業」を労働力への投資、「就業」を労働力の運用とすれば、「失業」は労働力のデフォルトと言える。均衡失業率の高止まりは、労働力のデフォルトリスクの高止まりに他ならない。