何歳まで生きるのか:平均寿命と平均余命の違い
前回はオヤジ世代の老後に待ち受ける様々な困難についてお話ししましたが、第2回からは数回にわたり年金の問題点をもう少し掘り下げていきます。人口推計に関する各種データによると日本は2011年時点ですでに65歳以上の方が全人口の23.4%を占めていますが、長寿化による老齢人口の増加、さらには未婚化・晩婚化による少子化などの影響から、50歳前後のオヤジ世代が65歳を迎える25年頃にはこの比率が30%を超え、50年には約40%にまで跳ね上がる見通しです。このため、人口動態に基づく制度である公的年金制度の改革も待ったなしの状況に追い込まれているのです。こうした人口動態のバランス悪化が日本の年金制度に与える影響については次回お話ししますが、今回は個人レベルでこうした長寿化にいかに対処すべきかに焦点を当てます。
老後資金の計画を立てるとき、誰もが真っ先に考えるのは、自分と配偶者が何歳まで生きるのか、という問題でしょう。その際、大半の人が思い浮かべるのは「平均寿命」ではないでしょうか。2010年の簡易生命表によると、日本人男性の平均寿命は約80歳であるため、それを前提に老後の人生設計を考える人が多いと思います。しかし、平均寿命には高齢者になる前に亡くなった人も含まれるため、老後の長さを測る尺度としては必ずしも適切とは言えません。
老後の人生設計に不可欠な余生を計算するには、ある年齢まで生きた人がそこからさらに何年生きるかを表す「平均余命」を使う必要があります。これで見ると65歳男性は平均でその後19年、つまり84歳まで生きており、平均寿命の80歳より4年も長生きすることになります。しかも日本人の寿命は年々長くなっており、オヤジ世代が65歳になる2025年前後には、65歳男性の平均余命はさらに1歳延びて85歳になると予測されています。また、ある調査では、自分が健康と思っている高齢者ほど長生きする傾向が確認されています。「病は気から」とはよく言いますが、「寿命も気から」なのです。したがって、自分の健康に自信がある人は一般的なデータよりも寿命をさらに長めに考えていたほうがよさそうです。
「平均」の落とし穴
長生きは本来とても喜ばしいことですが、現在は子供に面倒をかけたくないという方が多く、高齢者にも経済的な自立が求められます。このため、自分では十分な老後資金を用意したつもりでも、想定以上に長生きすると、それを使い果たしてしまう、いわゆる「長生きリスク」があります。それに備えるためには老後の長さを考えるとき、前述のように平均余命を使うべきですが、その際に注意する必要があるのは「平均」の意味です。