サイズ自体をなくすZOZOSUITの衝撃

 2017年末、アパレル系eコマースサイトとして大きな存在感を示すZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイが、プライベートブランド(PB)「ZOZO」を開始すると発表した。

 スタートトゥデイは、不振の続くアパレル業界にあって、既に時価総額で1兆円規模と、主要百貨店の時価総額を超え、文字どおりディスラプターとして業界では今や向かうところ敵なしの状況である。

 そして、スタートトゥデイは、このPB向けに「あなたの身体を瞬時に採寸することのできるボディースーツ」と銘打ち、伸縮センサー内蔵の「ZOZOSUIT」を発表、ただちに無料配布を開始した(※)。

※スタートトゥデイは2018年4月27日、新型のZOZOSUITを発表。新型は、旧型のセンサーを利用したものと異なり、スーツに描かれたドット上のマーカーをスマホのカメラで360度撮影することで体型サイズを計測するタイプとなっている。以下の写真は旧型のスーツ。

「ZOZOSUIT」は大量の体格データを<br />入手することが目的、ではないスタートトゥデイの採寸ボディースーツ“ZOZOSUIT”
出典:http://zozo.jp/shop/zozo/goods/25782997/

 S、M、Lといった既成のサイズから選ぶという「人が服に合わせる」のではなく、「服が人に合わせる時代」を実現することがミッションだとスタートトゥデイの前澤友作社長は自らツイッターに投稿したが、ZOZOSUITはトップスとボトムスの上下に分かれており、これらを着用した上で、胸元のセンサーとスマートフォンをブルートゥースで接続することで、「体のあらゆる箇所の寸法が瞬時に計測」できる。

 インターネットを通じてあらゆるものが買えるようになった現代、実店舗で服を買う理由がもはや試着にしか見出せなくなってきている中、そもそも既成のサイズという概念そのものをなくすという発想は衝撃的だ。

 ZOZOSUITを無料で配布することによって、スタートトゥデイは多くの人々の細部にわたる体格データを入手することができることとなった。しかし、スタートトゥデイがデータを取得することは目的ではなく、あくまで顧客の利便性を高め、顧客にZOZOを選んでもらうための手段でしかない。

 入手したデータは既にあるアパレルeコマースサイト「ZOZOTOWN」内での検索やレコメンド時に活用されるほか、PBのZOZOの顧客はただ発注するだけで、カスタマイズされた服を購入できる。

 世界中の人々が服を買う上で面倒だと思っていること、なくなれば良いと思っていること、それが何かから考えなくてはならない。データとテクノロジーはあくまで手段でしかない。

 目的と手段を履き違えることはよくある話だ。そしてその結果、致命的な間違いを起こすこともよくある。だからこそ、今一度、自身がやっていることを振り返って考えることが重要だ。果たして最も重要な課題は何なのか?(=目的は何か)、その見極めが重要となる。

(この原稿は書籍『破壊――新旧激突時代を生き抜く生存戦略』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)