グーグルでは、ある言葉が社内の上から下まで徹底して浸透していた。問題にぶち当たったときに、社内の共通言語として必ず出てきたセリフだ。グーグル社員は、無邪気なまでに「顧客視点」であり、「自社事業の外側の観点=アウトサイドイン」で考える。それは、GAFA──米国西海岸を発祥地とするグーグル、アップル、フェイスブック、そしてアマゾンの4企業にも共通する考え方でもある。グーグル、ソフトバンク、ツイッター、LINEで「日本侵略」を担ってきた戦略統括者・葉村真樹氏の新刊『破壊――新旧激突時代を生き抜く生存戦略』から、内容の一部を特別公開する。落合陽一氏推薦!
ディスラプター(破壊者)に共通するアウトサイドインの視点
GAFAという言葉がある。グーグル、アップル、フェイスブック、そしてアマゾンの4企業の頭文字を並べて、これらをまとめた呼称である。これらの米国西海岸を発祥地とする企業は、デジタル技術によってそれぞれの分野で市場を席巻、既存の業界構造を破壊した上で、寡占状態を生んでいる現代の代表的なディスラプターである。
4社にはそれぞれの個性があるものの、彼らに共通するものが一つある。それは常に「自社事業の外側の観点=アウトサイドイン」でアプローチしていることである。言い方を換えると、常に顧客視点であるということだ。そして、それを無邪気なまでに信じ、実践しているということである。
私がグーグルに入社したのは今から10年以上前のことであるが、新入社員時にそれとなく見せられて、とても衝撃を受けたものがある。それが「グーグルが掲げる10の事実」である。
グーグルが掲げる10の事実
1 ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。
2 一つのことをとことん極めてうまくやるのが一番。
3 遅いより速いほうがいい。
4 ウェブ上の民主主義は機能する。
5 情報を探したくなるのはパソコンの前にいるときだけではない。
6 悪事を働かなくてもお金は稼げる。
7 世の中にはまだまだ情報があふれている。
8 情報のニーズはすべての国境を越える。
9 スーツがなくても真剣に仕事はできる。
10 「すばらしい」では足りない。
これは、社是のようで社是ではない。あくまでグーグルが見つけた客観的な「事実」であることが重要だ。「これを守れ!」と上からスローガンを押し付けるのではなく、「こういう事実が存在していますよ」ということを提示するという形を取っている。まるで冷静な科学者のようなアプローチである。
改めて「10の事実」の一番初めを見て欲しい。「ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる」とある。アマゾンが「お客様」としていたのが(前回参照)、グーグルでは「ユーザー」となっているが、言っていることはまったく同じである。