こういう究極の選択を即興でしなければならない場面に遭遇した時、被害を最小限に留める方法は何かといえば、やはり、「即応力」なのです。具体的に言うと、とにかく間髪入れずに明るく、なんでも良いから即答するという方法が有効です。先ほど説明したように、相手は、どっちと答えて欲しいという願望はありません。だから、即答さえすれば、「仕事」でも「私」でも、答えはどちらでも構わないのです。

 例えば、仕事と即応するのであれば、「仕事だよ。だって、もし俺が急に仕事をやめてニートになったら、君だって別れようって思うでしょ。確かに、最近、仕事ばっかりになっていたのは謝るよ。だけど、仕事をおろそかにすると二人の関係の土台も崩れちゃうみたいな所もあるしさ」という感じで、仕事と答えつつ「どちらも大切」とウヤムヤにしてしまいましょう。

「君だよ」と即応する場合なら、「君だよ。仕事だって、君のために頑張っている部分も大きいよ。将来的に結婚とか考えたら、俺の仕事がきちんとしてなかったら、君に苦労かけちゃうから頑張っているだけだよ」と、「君」をキッカケに会話を始め、「どちらも大切」と話を煙に巻いてしまえばいいのです。

出演女性を泣かしまくる毒舌でも
明石家さんまの好感度が高い理由

 では、「ちょっと間を置く」のではなく、「即答する」事が、どのぐらい強力な技なのかわかりやすい例を紹介したいと思います。明石家さんまさんと言えば、好感度の高いタレントランキングの常連です。ところが、さんまさんは、子どもの頃の福原愛さん、20歳前後の『恋のから騒ぎ』に出演していた素人女性、それなりの実績があった山瀬まみさんなど、多くの女性を泣かすほどの過激なトークをするタレントです。

 それほどのことをしているのに、どうしてさんまさんの好感度が高いかというと、さんまさんの即応力がバツグンに高いからなのです。さんまさんは、相手に毒舌を吐く時も、すごい速さで相手に毒を投げつけます。しかし、その後のフォローも素早く、毒も笑いのために必要だったと力説し、毒の核心部分をウヤムヤにしてしまいます。だから、さんまさんの吐く毒は、深く考えた感じの嫌味な毒ではなく、相当キツイ毒でも「軽いノリから出た一言」ぐらいにしか感じられないのです。

 最近は滅多にありませんが、テレビ番組の中でさんまさんが誰かを泣かしていたら、注意深く観察してみましょう。電光石火の速さでウヤムヤにして、笑いを取るためには仕方なかったという事にしているはずです。

 このように、誰もが何気なくやってしまう「ちょっと間を置く」という行為は、自分を不利な状況に追い込みがちです。ですから、「慎重なコミュニケーション=ゆっくり」という固定観念を持っている人は、それを捨てて、素早いテンポの会話も意識してみてください。