ケアマネジャーが自身の所属する事業所グループの介護サービスを意図的にケアプランに組み込むことが少なくない。収入増を目論む経営者の指導に抗えないからだ。この「囲い込み」を排除する減算措置(特定事業所集中減算)まで制度として設けられている。

 ケアプランの自己作成実践者は極めて少ない。全国で1000人にも満たない。在宅サービスの利用者の0.1%にも達していない。市町村自治体の多くは「ケアプラン作りは難しく、素人は手を出さないで」「ケアマネに頼んでも無料だから」と事実上の門前払いをしている。費用の請求業務など給付管理が自治体の業務となり、手間を避けようと及び腰だ。厚労省も「自己作成」そのものを自治体や事業者にきちんと説明してこなかった。

 厳しい状況の中での実践者の意識は高く、自身の生活を振り返ってよりふさわしいサービスや事業者を厳選していると言えるだろう。

 社会的な支援が必要な人たちへのさまざまな「共助」「互助」の仕組みが浸透するとともに、当事者の「思い」が重視されつつある。自らの判断による「自己決定」の声が挙がってきた。がんを含め多くの疾病にはそれぞれ患者団体が活動し、障害者団体が国の審議会に参加している。

 意思表明が難しいと言われていた認知症の人たちも「日本認知症ワーキンググループ(JDWG)」を4年前に立ち上げ、当事者ならではの発信を始めた。英国スコットランドで世界初の認知症の人たちの当事者グループが旗揚げされたのは16年前。そのスローガンは「私たち抜きに私たちのことを決めないで」だ。

 1982年にデンマークで打ち出された高齢者ケアの三原則が国際的に受け入れられており、その第一番は「自己決定権の尊重」である。自己決定の考えが今や認知症の人を含めて、あらゆる要支援者に広がってきた。

 介護保険も、施行6年後に「本人の尊厳の保持」を組み入れた。自己選択、自己決定がなければ尊厳は保持されない。介護サーサービスを選択するのは本人自身であることを忘れてはなるまい。

 疾病を抱えた時でも私たちは、診療所や病院を自分自身で選んで受診している。自己決定そのものだ。通院時に医療保険制度で「メディカル・マネジャー」は存在していない。日常生活を送る場面では、常に自己選択を迫られている。買い物や映画やスポーツを観に行くときも同様だ。選択、決定があるからこそ満足感が得られ、それこそが「尊厳の保持」だろう。

 介護保険のサービスを使うときも同様である。多くの介護事業所の中から選択し、決定し契約を交わす。その主役は本人自身でなければならない。

(福祉ジャーナリスト 浅川澄一)