庶民とは縁のない、こうした富裕層向けの自動車市場が今、日本を含めて世界各地で拡大しており、その中にあってマクラーレンのビジネス手法が実に興味深い。

成功のカギは「マーケットイン」
フェラーリ、ランボルギーニと一線を画す

「マクラーレン・セナ」の車内「マクラーレン・セナ」の車内 Photo by Kenji Momota

 マクラーレンの原型は、ニュージーランド出身のレーサー、ブルース・マクラーレン氏が1963年に興したレーシングカー製造会社。マクラーレン氏が事故で亡くなった後、70年代以降はF1を中心に活動し、セナを含めてこれまで20回の世界タイトルを獲得している名門レーシングチームだ。

 90年代からは、奇才デザイナーとして知られるゴードン・マレー氏の手によるスーパーカーを製造販売しているが、生産台数は極めて少なかった。

 昔からのレースファン、またはクルマ好きにとっては、マクラーレンといえばそうしたふた昔前までのイメージが強く、近年のマクラーレンのビジネスの実態を知る機会は少ないように思える。

 現在、マクラーレングループの中ではF1チームとマクラーレン・オートモーティブ社が事業の柱となっている。マクラーレン・オートモーティブが量産車に本格参入したのは、2010年と日が浅い。

 その頃、アメリカではリーマンショックからのV字回復基調が徐々に見え始め、またBRICsと呼ばれた中国を筆頭とする新興国の自動車市場の拡大がペースアップしていた。

 それを契機として捉えたマクラーレンが行ったのが、徹底した市場調査だ。いわゆるスーパーカーや超高級スポーツカーにおける既存ユーザーの動向、そして新規に開拓可能なユーザーの趣向を分析した結果、フェラーリでもランボルギーニでも、そして英国アストンマーチンでもない、マクラーレン独自の世界観を創出していった。