本当に実のある
米朝首脳会談が実現するか
紆余曲折を経て、現時点での予測では、6月12日にシンガポールで史上初の米朝首脳会談が開催される見通しだという。専門家にヒアリングしてみると、「本当に実のある会談が実現するか否かはよく分からない」との答えが返ってくることが多い。
会談の最大の争点は北朝鮮の非核化のプロセスと見られるが、米朝両国が妥協点を見いだせるか否か不透明だ。非核化の実施前に「体制維持の保証」などを求める北朝鮮と、何よりも先に「非核化の実行」を求める米国が、どこかで折り合いをつけることは至難の業のように見える。
ただ、一つ確かなことは、北朝鮮がかなり焦っていることだ。安全保障の専門家の間では、米中からの圧力を受け、金正恩委員長が体制維持への危機感を強めているとの見方が多い。それに加えて、国連を中心とする制裁により、北朝鮮の社会も疲弊しているようだ。
その状況を打開するために、北朝鮮は外交方針を改め、表面上、対話の姿勢を示している。5月26日の南北首脳会談で金委員長が“朝鮮半島の完全非核化”に改めて言及したのもその一環と見られる。
今のところ、米朝両者の要求はかみ合わない。少なくとも、妥協点を見いだせていないように見える。今後の交渉次第では、首脳会談の実施すら危ぶむ声もあるようだ。あるいは、会談が実施されたとしても、会談途中でトランプ大統領が席を立つことも想定される。米朝の関係を楽観的に考えるのは禁物だ。