ビルの屋上の柵を乗り越える愛人女性
自殺を止めに入ると…

 愛人女性は電話をかけたまま泣きながら階段で屋上に上がり、泣き崩れてビルの屋上の柵を乗り越えた…その瞬間、レッドスターから「何があってもここを動くな!」と言われた事、直美さんには高い調査料を支払っていただき、今が大詰めだから我々探偵の存在がバレてはいけない、などさまざまな思考が頭の中で駆け巡りましたが、気付いたら私は愛人女性のいるビルの屋上目掛けてダッシュしていました。

 階段をかけ上り、愛人女性が屋上の柵を乗り越えて電話をしていました。私はとっさに「何やってるんですか!」と泣き崩れる愛人女性を引きずり降ろすと、「あんた何なのよ!あんたなんかに何が分かるのよ!」と怒鳴られました。そのタイミングで健太郎さんが隣のビルから駆け付けてきました。

 健太郎さんから「何かすみません!」と言われ「こちらこそ!」と訳の分からない挨拶を交わし、定位置に戻ると、渋い顔をしたレッドスターが仁王立ちでこちらをにらみつけていました。

 これは怒られる、もうクビだな…とか走馬灯のように考えが巡りました。私はレッドスターに「申し訳ございませんでした」と素直に謝ると、レッドスターはカメラを上に向け、屋上にピントを合わせて連写で撮り、一言「よくやったな!片岡」と褒めてくれました。

 私は驚き、振り返りビルの屋上を見ると、なんと健太郎さんと愛人女性が熱いキスを交わしていました。その後、レッドスターはニヤリと笑い「お疲れさん~」と一言だけ残し、闇に消えていきました。

 後日、直美さんに屋上のキスの写真を見せると「これで黒ですね」とおっしゃりました。ただ直美さんはお子さんが2人いる事、健太郎さんの将来約束されている会社でのポジションなどを考え「子どもが20歳になるまでは我慢します」と衝撃的な一言を残されました。健太郎さんと愛人女性との関係は一時的で、戻ってきてくれると思われているのかもしれませんね。いろいろな夫婦の形があるものです。

『ハプニングで燃える恋』そして『探偵の熱意』…点と点が線になる探偵トークでした。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。ご了承ください。