築47年の近江八幡市庁舎築47年の近江八幡市庁舎。老朽化と耐震強度不足で引退間近 Photo by Toshihide Aikawa

動きだしたら止められないのが、日本の公共事業だ。だが、そうした常識を根底から覆すような事態が滋賀県近江八幡市で起こっている。工事が進む新市庁舎建設の見直しを掲げて当選した新市長が、事業を白紙に戻したのである。建設を推進した議会側は怒り心頭に発し、新市長とのバトルが始まった。(地方自治ジャーナリスト・相川俊英)

 傍聴席は詰め掛けた市民でいっぱいで、両サイドの取材エリアもテレビカメラがズラリと並んだ。5月17日午前9時30分、滋賀県近江八幡市の市議会本会議場だ。市議会の臨時会が開かれ、4月15日の市長選挙で現職をダブルスコアで退けた小西理・新市長が初めて議場に姿を現した。

 小西市長に注目が集まったのは、就任初日(4月25日)に大胆な行動で近江八幡市民を仰天させたからだ。選挙公約を電光石火で実行に移しただけだが、その内容が半端ではなかった。工事中の新市庁舎建設を即時中止したのである。

現市庁舎横で進められていた新市庁舎建設。地盤改良作業で開けられた大穴があちこちに Photo by Toshihide Aikawa

 近江八幡市で新市庁舎建設の取り組みが始まったのは、2006年に現市庁舎(1971年築)の耐震強度不足が判明してからだ。基本計画が16年2月に策定され、現市庁舎敷地内に6階建てと3階建ての2棟を建てることになった。延べ床面積は約2万平方メートルを超え、総事業費は90億円近くに上る。

 市民の間から「巨大過ぎる」「カネが掛かり過ぎる」との不満が噴出したが、予算案も工事契約議案も賛成多数で市議会を通過し、今年2月に着工。工事は20年1月の供用開始に向け急ピッチで進められていた。