公共施設の再配置事業で独自の方式を展開し、全国の自治体関係者から「西尾市方式」として注目されている愛知県西尾市。ところが、その手法に住民から異論が噴出し、昨年の市長選で見直しを公約に掲げた新市長が誕生。計画に急ブレーキがかかっている。一体、何があったのか、その背景を探った。 (地方自治ジャーナリスト 相川俊英)
「大幅な内容変更になりますが、市民に一番広く受け入れられるものになったと思います」
冷静な表情でこう語ったのは、愛知県西尾市の中村健市長。
中村市長は3月5日の市議会全員協議会の場で、市が推進していたPFI(民間資金活用による社会資本整備)方式による公共施設再配置事業の大幅な見直しを発表し、その直後に記者会見に臨んだ。
事業の見直しは、昨年6月の市長選挙で中村氏が掲げた公約の目玉だった。西尾市の職員と市議会議員(1期)を経て市長となった中村氏は38歳。3選を目指す77歳の榊原康正前市長を2万7164票の大差で退け、初当選した。
中村氏は新市長に就任後、PFI事業の一時中止を表明、工事に待ったをかけた。さらに市庁内に検証室を設置し、PFI事業の徹底検証と見直し作業を進めていた。
発表された見直し方針は対象となる32事業のうち、18事業が計画通りの実施となり、市民から批判が多かった施設の新設など10事業は取りやめ、建設済みの建物を含めた4事業は計画を一部変更した上での実施となった。市はこうした方針を基に、PFI事業の契約先である特別目的会社、エリアプラン西尾との協議を重ねている。