今治タオルは産地消滅寸前の危機からどうやって復活したか藤高豊文(藤高社長) Photo by Tsuyoshi Maeda

 ハイブランドが集まる東京・銀座最大の商業施設「GINZA SIX」のすぐ裏手の一等地──。6月20日、タオル国内生産売上高ナンバーワンの藤高(愛媛県今治市)の直営店「FUJITAKA TOWEL GINZA」が、この地にオープンした。

 1919年創業で来年100周年を迎える老舗の同社にとって、東京への出店は3度目の挑戦。今回は5階建てのビルごと購入し、店舗、ショールーム、営業所を構える。「東京本社と位置付けている」と藤高豊文社長が語るように、今回は不退転の覚悟で臨む。

 今治タオルの特徴は、柔らかな風合いと抜群の吸水性にある。実は、この二つの特性を両立させるのは非常に難しい。柔らかな糸を使うと製織(タオルを織る工程)の際に糸が切れやすくなる。そこで糸の強度を高めるために、織る前に糊を付け、織った後に洗って糊抜きを行う。この際、糊が十分に洗い流されずに残ると、水をはじくため吸水性が落ちてしまう。

 そこで重要になってくるのが、糊付けの加減と水だ。例えば藤高では、何百種類もある糸によって糊付けの仕方を変えている。糸によって糊の付き方や落ち方が違うからだ。まさに職人の技である。

 一方、水が重要なのは、その種類によってタオルの風合いが変わってくるからだ。蒼社川の伏流水や石鎚山から流れ出た地下水はいずれも、硬度が低く不純物が少ない軟水であるため、糸や生地に優しく、柔らかな風合いを引き出すことができる。これが硬水だと、糸や生地に鉄分が残ってタオルが硬くなってしまうのだ。

 今治が日本一のタオル産地になったのは、過去から積み上げてきた職人の技と、豊富な軟水を生み出す風土があったからなのである。