相手を煙に巻いて自説を通す!
企業に蔓延するご飯論法

 ビジネススキル演習を実施していたり、経営改革をサポートしたりしていると、このご飯論法が、職場のあちこちで使われている事例に直面する。特に、専門用語を駆使する管理部門と非管理部門の間でのやりとりで散見される。管理部門と営業部門で足並みがそろっていなかったり、本社と現場で対立が生じていたりするなど、部門間連携に問題がある企業では、起きやすい事例である。

 私が直面したり、演習で見聞きしたりした事例の中には、以下のようなご飯論法がある。

候補者:歩合給ではなく、支給見込額が低くても、固定給の給与制度の適用を希望しているのですが、可能でしょうか?
採用担当者:わかりました(と言いながら歩合給の制度で採用する)。
候補者:(後日雇用契約書を確認して)希望した固定給ではないようなのですが。
採用担当者:支給見込額が高いので、承知してくださると思いました。

 この事例は、候補者が固定給を望んでいることをわかっていながら、歩合給で採用したいと考えた採用担当者が、正面からすり合わせをすることなく、表面的には「わかりました」と言いながら、歩合給でサインさせてしまおうともくろんだ悪質なケースだ。社員がサインしてしまえば、こちらのものだという意図が見え隠れする。

社員:今月の給与支給額が間違っているように思うのですが(残業手当を含む給与支給の総額のことを言っている)。
給与担当者:違っていません。
社員:(明細を示して)やはり違っているのですが。
給与担当者:給与支給額は間違っていません(残業手当を含まない月例固定給与支給額のことを言っている)。

 この事例は、相手をだまそうとしているというよりは、自分の間違いを認めたくないという思いが強いあまり、防衛本能により、給与区分による月例固定給与は間違っていないと言い張らずにはいられなかったケースだ。人事の専門的な給与区分の違いを示して社員に対して威厳を示したいという心理が見え隠れする。