ご飯論法の使い手には
共通の特徴がある

 もう一つ、事例をご紹介しよう。

新入社員:健康保険証が届かないのですが。
福利厚生担当者:健康保険証は健康保険組合から直送されます。人事部は取り次いでいるだけですので詳しいことはわかりません。
新入社員:では、健康保険組合に直接聞きますので、連絡先を教えてください。
福利厚生担当者:組合員が直接問い合わせることは禁じられています。必ず人事部を通してください。
新入社員:だったら健康保険組合に問い合わせてくださいませんか。
人事部担当者:他の社員もいますので、あなたの分だけを特別に問い合わせるわけにはいきません。

 この事例は、管理体質が極度に染み付いてしまった揚げ句、社員に不都合を押し付けてしまっているケースだ。実際にはほとんどの健康保険組合では、一社員からの問い合わせに対しても親切に対応してくれる。企業の人事部がバリアになってしまっている状況が見え隠れする。

 こうしたご飯論法の使い手には特徴がある。会話やメールのやりとりで、質問したことにストレートに返事が返ってこない人は、ご飯論法の使い手もしくはその予備軍だと思って、ほぼ間違いない。次のような事例もある。

社員A:共同で運営する計画を突然中止したようですが、その理由は何ですか?
社員B:中止しないことにしました。
社員A:反対しているわけではないのです。理由を教えていただければ大丈夫ですから。
社員B:てっきり連絡が行っているものと思っていました。
社員A:理由を知りたいだけなのですが、教えていただけませんか…。

 この事例では後に、AとBの間の人間関係が非常にこじれた。社員Aから計画の中止の理由を問われた際に社員Bが正直に理由を説明したり、あるいは社員B自身、理由がわからないならば「わからない」ということをストレートに返して状況を共有すれば済む話だったのに残念である。

 相手から何か質問をされたら、自分の意図がどうであれ、まずは相手の質問にストレートに答えることが、ビジネスでの信頼関係醸成には必須だ。そのうえで、自分なりの考え方があるならば、それを説明すればいい。また、自分に非があれば素直に認めることだ。間違っていれば謝ればいいし、進行が遅れているならば、わかる範囲での進捗状況を共有すればいいのだ。

 誠実な対話から逃げて、ご飯論法によるすり替えやごまかしをしようとするから、信頼関係を崩すことになる。政治にしろビジネスにしろ、「信頼できないヤツだ」と思われてしまったら終わり。ご飯論法は目先の保身にはとりあえず成功する場合もあるだろうが、中長期的に見ればビジネスに壊滅的な悪影響を及ぼす、究極の「悪手」である。