京都銘菓・八ッ橋の老舗メーカー間で勃発したバトルが話題を呼んでいる。「聖護院八ッ橋総本店」がうたっている「元禄二年創業」というのがでたらめであると、ライバルの「井筒八ッ橋本舗」が噛み付いたのだ。(ノンフィクションライター 窪田順生)

八ッ橋の老舗メーカー間で
勃発したバトル

老舗八ッ橋メーカー間でバトルが勃発している10年ほど前から、「元禄二年創業」を俄然アピールしはじめたという聖護院八ッ橋総本店に、同業である井筒八ッ橋本舗が噛みついた。しかし、この「創業の古さ」アピールには、大きな落とし穴がある(写真はイメージです)

 一昨日、トランプと金正恩というクセ者同士の対決に世界が注目したが、実は日本の京都でも、互いに一歩も引くことのできぬ因縁のライバル同士が、神経のすり減るような心理戦を繰り広げていることをご存じだろうか。

 京都銘菓・八ッ橋の老舗メーカー「井筒八ッ橋本舗」(以下、井筒)と、同社から先ごろ、「元禄二年(1689年)という創業年がでたらめ」と提訴された、同じく老舗「聖護院八ッ橋総本店」(同、聖護院)である。

 実は6月12日というのは、「八ッ橋」という名の由来になっている、八ッ橋検校(近世箏曲の祖といわれる江戸時代の箏曲家)の334回忌なのだ。八ッ橋メーカーからすれば、まさに「八ッ橋記念日」とでもいうべき日であり、創業年バトルを繰り広げている両社も検校を偲ぶ催しを開いて、そこでそれぞれのスタンスを明確にしている。

「毎日新聞」(6月13日)によると、提訴された聖護院の鈴鹿且久社長は、施主をつとめる法要「八橋忌」において、これまで通り「困惑」という姿勢を強調した。

「皆さま方にご心配をかけ、心からおわびします。検校さまが一番お困りだと思うと心苦しい」

 一方、「創業 元禄二年」の使用禁止を求めている井筒は、自社が主催する「第70回八橋祭」において、井筒グループの津田佐兵衛オーナーがこのように述べたという。

「土産品業界の不信用は京都の不名誉な行為。私は京都市、日本の信用を高めるため努力している。決して自社のためではない」

 こういう両社のスタンスをあらためて聞いてみると、井筒側が聖護院に対してバトルを仕掛け、難癖をつけているという印象を抱く人も多いかもしれない。