同様に、化学の世界においても、「美味しい」と評判のシェフが率いるお店のように、新しい価値を生み出すことで独自の存在感を発揮していきたい。

――先ほど中国の話が出ましたが、20年前とは事情が変わっているはずです。現在のアジア市場における日本法人の位置付けは、どうなっていますか。

 世界全体で見ると、2017年度の連結売上高(8兆2386億円)における構成は、欧州が45%、北米が24%、アジア・太平洋が22%、南米・アフリカ・中東が9%となっています。そのうち、アジア・太平洋地域に限れば、中国が51%、ASEAN(東南アジア諸国連合)が15%、日本は12%、南アジアが11%、韓国が8%、オーストラリア・ニュージーランドが3%という構成になっている。

 中国市場が台頭してきたのは、この10年です。じわじわという感じで市場が拡大を続けてきた中国に対して、ドイツのBASFはかなりの規模感で投資をしてきました。一方で、日本法人は12%というビジネスの規模をさらに大きくする、もしくは維持する必要がある。かつて日本は域内で1位でしたが、2位になった現在でも、最新の化粧品や紙おむつなどのように市場が求める細かいニーズにしっかり対応して新製品を開発するという能力に関しては、日本のメーカーに技術優位性がある。そこは、やはり質実剛健なドイツのメーカーは勝てない。

レストランの精算に現れる
狩猟民族と農耕民族の違い

フェアブント拠点創業時から連綿と続くフェアブント拠点は、広大な敷地内に300以上の整備が集中する。写真のルートヴィッヒスハーフェン(ドイツ)以外にも、アントワープ(ベルギー)、ガイスマーとフリーポート(米国)、クアンタン(マレーシア)、南京(中国)にもある 写真提供:BASFジャパン

――外資系企業にもいろいろありますが、とりわけ石田社長が驚いた「ドイツ人気質」のようなものはありますか。

 そうですね。私は、米国企業に勤めた経験がないために米国の事情は分かりません。しかし、北米で働く同僚などと話すと、ドイツ企業は物事をじっくり分析した上で慎重に進めていくのだということを強く感じます。米国のIT企業のように「やってみて、ダメだったら変えればよい」という感じではない。

 ドイツ企業は、マネジメントというものを極めて合理的に考えていますし、創業時から連綿と続くフェアブント拠点(統合生産拠点)にしても、今日では世界全体で運営されています。「リスクは取るが、用意周到に進める」という感じでしょうか。