しかし、自治事務である以上、同法の規定や趣旨に明らかに反する場合等を除いて、都道府県等は自ら条例を制定して規制を強化することが可能だ。同法の施行に向けて、多くの都道府県等で施行のための条例が制定され、本年2月26日の第26回規制改革推進会議に国交省が提出した資料によれば、そのうち25の道府県及び市区で区域や期間の制限、行為規制を内容に含む条例が制定されている。

 その中には、同法の目指した方向性とは裏腹に、住居専用地域での住宅宿泊事業の実施が制限されているものもある。

 そうした条例は、ある種無秩序に広がった民泊への不安や反発といった住民感情、旅館・ホテル業界からの懸念に配慮したものと考えられる。しかし一方で、住宅宿泊事業は旺盛な宿泊需要を満たすための、旅館やホテルの補完的な位置付けでもある。そもそも過剰に規制する条例は、法の趣旨からしてもこれを逸脱する可能性が高いし、場合によっては明らかに“逸脱”していると言ってもいいだろう。

 最初から過度に規制するのではなく、後述する改正後の旅館業法の規定とあいまって、取り締まりの適正化を通じて不安や反発、懸念に応えていくというのが妥当なはずなのだが、新しくできた制度には「既存の類似した制度の考え方」で対応した方が安心ということなのだろうか。「旅館・ホテルと同様」の考え方で規制しようという傾向が強いようだ。

 国としてはお願いベースで、都道府県等に法の趣旨を踏まえた条例となるよう周知しているようだが、当分の間はこの傾向は変わらないだろう。

民泊の住宅には「標識」が義務
偽造が頻発する懸念も

 同法第13条では、住宅宿泊事業者は届出を行った住宅に、標識を貼ることが義務付けられている。これにより「適法に事業を行っている住宅かどうか」を簡単に見分けられるようにしようということなのだが、この標識の様式については、施行規則第11条並びに第4様式、第5様式および第6様式において定められているものの、これを発行する主体についても権限についても同法には規定はない。

 様式はインターネットに掲載されているので、それをそっくりそのまま使って偽の番号等を付して掲示したり、または標識自体を偽造して、それに他の届出済みの物件の番号を勝手に記載して掲示したりするなどにより、さも“適法な物件”のような体裁を整えて営業を行う違法物件が出てくることも考えられる。