大学卒業後、Aが働いていた甲社の総務課は、残業が多い部署。月に平均50時間、多い月では80時間を超えることもあった。ところが3ヵ月前、労働基準監督署から36協定違反で是正勧告されたため、会社は課員が担当している業務の洗い出しを徹底的に行った。その結果、業務の一部を外注するなど、残業時間の大幅カットに成功、多くの社員は喜んでいた。一方のAは残業代がもらえなくなったことで、不満を感じ…。(社会保険労務士 木村政美)
物流会社。従業員数200名。総務課には6名が配属されている。
<登場人物>
A:総務課勤務。28歳。真面目で目立たない性格だが仕事面では優秀な社員。社内では誰も知らないが地下アイドルC子の大ファンで、学生時代から追っかけをしている。
B:総務課長。40歳。軽口を叩く時があり、パワハラ気味な性格。
C子:Aが追っかけをしているアイドル。20歳代前半。
D:別会社に勤務するAの友達。28歳。Aと一緒に毎週アイドルのイベントに参加している。
E:B課長の大学時代の同級生で社労士。
労基署の指導後、残業代ゼロに
アイドルイベント参加の軍資金が…
課員たちは労基署の是正勧告により残業時間の減少を喜んでいたが、逆にAはショックを受けていた。その理由は残業代が出なくなったことで、Aが追っかけをしているアイドルC子を応援するためにかかるお金の捻出が苦しくなったからだった。
その週の日曜日、AはC子のミニライブに参加した。そこで追っかけ友達のDに悩みを打ち明けた。