ドーナツ屋の競合はケータイ電話?

小林:例えば、ローソンがセブンイレブンを競合と見るのは別に想像力はいらないけど、ダスキンがミスタードーナツを経営していた時代に、ダスキンの人が「ミスタードーナツの競合は携帯電話だ」って言っていた記憶があります。
当時、ミスドから女子高生がどんどん減っていた。これまで、ミスドが女子校生のコミュニケーションの場として使われていたのが、携帯が普及したことで、友達とグダグダ喋るのにリアルで会う必要がなくなってしまったんやと。「そこで、競合のスコープを変えないといけない、という認識を持てた」っていう話をされていたんですけど、これはなかなか想像力がいると思います。
普通の発想だったら、「ドーナツの味が良くないからだ」とか、そういうレベルの話に終始してしまうじゃないですか。

村上:そのレベルの話を下からトップに上げて、理解してもらうのって凄いコミュニケーションコストかかるよね。

小林:めっちゃ難しい。

村上:ドーナツ屋で平社員がトップに向かって「携帯電話がうちの競合になりますね!」って言ったら、普通は「はあ?」って言われてお終いだよね。

朝倉:ドーナツ屋でカフェとかスターバックスが競合だというのは話として通るけども、「これ、結局のところ、コミュニケーションの場の話でしょ?」だとか「可処分時間の奪い合いでしょ?」って話になった瞬間、なかなか想像が及ばない。それを思うと慧眼でしたね。

小林:自分たちの中で想定する競争環境を限定しすぎに、幅広いスコープで競合をとらえ直すことを意識し続けないといかんのやろうね。

*次回に続きます。
*本記事は、株式公開後も精力的に発展を目指す“ポストIPO・スタートアップ”を応援するシニフィアンのオウンドメディア「Signifiant Style」で2017年10月9日に掲載された内容です。

顧客ガン無視。なぜ企業は「都合のいい市場分析」にハマるのか朝倉祐介 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。ラクスル株式会社社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。


顧客ガン無視。なぜ企業は「都合のいい市場分析」にハマるのか村上 誠典 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県姫路市出身。東京大学にて小型衛星開発、衛星の自律制御・軌道工学に関わる。同大学院に進学後、宇宙科学研究所(現JAXA)にて「はやぶさ」「イカロス」等の基礎研究を担当。ゴールドマン・サックスに入社後、同東京・ロンドンの投資銀行部門にて14年間に渡り日欧米・新興国等の多様なステージ・文化の企業に関わる。IT・通信・インターネット・メディアや民生・総合電機を中心に幅広い業界の投資案件、M&A、資金調達業務に従事。


顧客ガン無視。なぜ企業は「都合のいい市場分析」にハマるのか小林 賢治  シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県加古川市出身。東京大学大学院人文社会系研究科美学藝術学にて「西洋音楽における演奏」を研究。在学中にオーケストラを創設し、自らもフルート奏者として活動。卒業後、株式会社コーポレイトディレクションに入社し経営コンサルティングに従事。その後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、取締役・執行役員としてソーシャルゲーム事業、海外展開、人事、経営企画・IRなど、事業部門からコーポレートまで幅広い領域を統括する。