会社が考える「自社の強み」は自己満足
小林:連射枚数の話って、以前森川さん(注:C CHANNEL株式会社 代表取締役社長)にお話を伺った時に印象に残った「強みはエゴだ」という話と共通しているところがあると思う。
つまり、「ユースケースに合ってるか」とか「ユーザーに価値が提供できるか」が本質的に大事なはずなのに、「連射枚数が多いのが強みだ」っていうわかりやすい表面的な話が主になってしまう。実際には、そんなに連射することってまずないし、その機能をフルに使う人ってごく僅かなんやけどね。
朝倉:自分たちの「強み」なるものを設けて、それを軸に競合と相対比較していると社内の管理が楽なんですよ。士気を上げるのに、まず仮想敵を置いて「あいつらを倒す!」「ここは負けるな!」って言っていた方が分かりやすいし、社内向けの説明や方向性の打ち出しが楽。
小林:阪神やったら「絶対、巨人に負けるな!」って言ってる方が士気は保てるやろね。
朝倉:自分たちのサービスや製品を競合と比較する時も、あれもこれもって取り上げ出したらキリがない。だからとりあえずは特定のスペックだけを取り上げて競合との比較を説明していたら、少なくとも経営会議の作業はこなせる。そうした方が、プロセスマネジメントが楽なんですよ。その意味では仮想敵を設定するのって初歩的で安易なマネジメント手法とも言えるんやけど。
意図しない新規参入者が出てくることを全く想定していないのかというと、そんなこともないんやろうけど、面倒くさいしキリがない。なにより「関係ない」って信じたいですしね。
村上:事業レベルで比較を行うこと自体は否定しないけど、経営トップの意思決定の現場がそうした考えに囚われるというのは、どうなんやろ。本来は経営と執行が良い意味で分離されていないといけないんだけど、それがなかなかうまく機能できてないのかもしれない。トップは大局観に基づいた経営判断をすべきだから、現場から上がってきた比較表だけ見ていてはいけないのでしょうね。