ワールドカップ・ロシア大会で快進撃を続ける西野ジャパンが日本時間28日午後11時、引き分け以上で決勝トーナメント進出が決まるポーランド代表とのグループリーグ最終戦に挑む。開幕前の芳しくない下馬評を鮮やかに覆した選手たちのなかで異彩を放っているのが、先発メンバーで唯一の国内組となるセンターバックの昌子源だ。Jリーグを代表する常勝軍団、鹿島アントラーズのディフェンスリーダーを託されて5年目。サッカー人生で何度も味わわされてきた挫折を、強さと上手さをあわせもつセンターバックへ成長する力に変えてきた25歳は開幕直前にレギュラーを再奪取。世界からも熱い視線を浴びながら、ヴォルゴグラード・アリーナのピッチに立つ。(ノンフィクションライター 藤江直人)
国内組では唯一先発メンバーでフル出場
FIFAも「一番の驚きはゲン・ショウジ」と称賛
ポジションは与えるものではなく、自らの力で奪い取るもの――。サッカーを含めたスポーツの世界におけるこの鉄則を、Jリーグ最多となる19もの国内三大タイトル獲得数を誇る常勝軍団、鹿島アントラーズはあえて覆したことがある。
直近では2013シーズンのオフ。前人未踏のリーグ戦3連覇を達成した2007シーズン以降の3年間を含めて、アントラーズの最終ラインを10年間支えてきた岩政大樹(現東京ユナイテッドFC)との契約更新を見送っている。
アントラーズは背番号に「ストーリー」をもたせるクラブのひとつだ。たとえば「3番」は歴代のディフェンスリーダーが背負い、2大会連続でワールドカップに出場した秋田豊(現解説者)から金古聖司(現本庄第一高校監督)をへて、2006シーズンから岩政に受け継がれた。
ピッチには立てなかったものの、岩政も2010年のワールドカップ・南アフリカ大会の代表メンバーに名前を連ねている。功労者と袂を分かち合った理由を、1996年から強化の最高責任者を務める、アントラーズの鈴木満常務取締役強化部長はこう説明してくれたことがある。
「次のシーズンから昌子と植田にシフトする、という明確なプランがあったからです。かつて岩政にシフトするときに、秋田との契約を更新しなかったのと同じ考え方になります」
アントラーズの歴史を振り返れば、黎明期の1993シーズンから活躍してきた秋田は2003シーズンオフに退団。入れ替わるように、東京学芸大学から2004シーズンに岩政が加入している。