柴崎岳の正確無比なロングパス
写真:長田洋平/アフロスポーツ

2度奪われたリードに対し、MF乾貴士(レアル・ベティス)、MF本田圭佑(パチューカ)のゴールで追いついた日本代表が、2大会ぶり3度目のワールドカップ決勝トーナメント進出に王手をかけた。ロシア中部のエカテリンブルク・アリーナで強敵セネガル代表と2‐2で引き分けた西野ジャパンの心臓として、攻守両面で力強い鼓動を奏でたのは柴崎岳(ヘタフェ)。開幕直前のパラグアイ代表とのテストマッチで活躍し、一発回答でレギュラーの座を射止めたボランチは正確無比なパス、幅広い視野、そして華奢に映る175cm、62kgの体に搭載された豊富な運動量と球際での激しい闘志を存分に披露。以前から目標に据えてきた「26歳で迎えるワールドカップ」で、日本代表の“皇帝”の称号を得ようとしている。(ノンフィクションライター 藤江直人)

アギーレ監督に「ワールドクラス」と評されるも
ハリルジャパンでは1年10ヵ月のブランク

 取材ノートに書き留めた数々の文字が数年の歳月を超えて、ロシアの地で現実のものとなりつつある。4年に一度のサッカー界最大の戦い、ワールドカップの舞台で異彩を放ち続ける柴崎岳の一挙手一投足を見るたびに、2014年9月のノートの紙面を読み返したくなる思いに駆られる。

「柴崎はワールドクラスだ。まるで20年も経験を積んだかのようなプレーを見せてくれる。彼はかなり遠いステージまで行き着くことができるだろう」

 中盤における大ベテランのような落ち着きぶりを絶賛したのは、前回のワールドカップ・ブラジル大会直後に日本代表監督に就任した、メキシコ代表の選手及び監督としてワールドカップを経験しているハビエル・アギーレ氏だ。

 アギーレ氏が指揮を執って2戦目となる、2014年9月9日のベネズエラ代表との国際親善試合。A代表デビュー戦のピッチへ送り出した当時22歳の柴崎は、自陣から長い距離を全力で駆け上がり、左サイドから送られたクロスに鮮やかなボレーを一閃して初ゴールをマークした。

 緊張と興奮が交錯するはずの初陣で演じた離れ業を、当然と受け止めていた人物もいた。柴崎が当時所属していた鹿島アントラーズを率いていた、同じくブラジル代表としてワールドカップを戦っているトニーニョ・セレーゾ監督だった。

「柴崎の両足はまるで宝箱だ。開けた瞬間にまばゆい光を発する。必ず日本代表で活躍する非凡な才能を、何とかして輝かせることだけを考えている」

 そして、誰よりも柴崎自身がロシア大会へ熱いまなざしを向けていた。メディアの前ではクールな言動に終始し、なかなか感情を表現することの少ない柴崎が珍しく本音に近い思いを漏らしたのは、アギーレジャパンの船出を直前に控えたときだった。