すると、ぼくからは訊きづらいだろうと気遣ってくれたのか、山田自らこんな質問をしてくれた。

でも、ホメすぎて、実はいい人やって思われてしまうのって、笑いの邪魔になってしまうんじゃないかと実は気にしてたんですけど

 苦笑しながら、レイザーラモンHGはこう答えた。

いや、たしかに(ホメられて)小っ恥ずかしいなっていうのはあるけど。でも……笑いへの向き合い方が正気じゃない、常軌を逸しているみたいなことを書いてくれてたんで。ちゃんと(プロとしての姿勢を)見てくれてるな、と思いましたよ

 二人の間には、なんとも言えないいい空気が流れている。互いの苦労を知る者同士ならではの雰囲気というのだろうか。二人のやりとりを聞いているだけで、なんだか晴れやかな気持ちになってくるのだ。

どの芸人も“一発屋”の呪縛に
もがき苦しみながら奮闘している

 本書を通読してあらためて感じたのは、この本は「負け」について書かれているということだ。どの芸人も“一発屋”の呪縛にとらわれ、もがき、あがき、それでも前を向いて生きている。

 作家の色川武大は、名著『うらおもて人生録』の中で、負けることの大切さについて書いた。賭け事で連戦連勝するような人間は、決まって命に関わるような致命的な負け方をする。大切なのはうまく負けを拾うこと。最終的に人生9勝6敗くらいを目指すのがちょうどいい……。この感じ、山田ルイ53世の半生にも通じないだろうか。思春期に挫折して引きこもり生活を送り、その後芸人になって大きく勝って、大きく負けて。でもいま再びこの本が評価されて、浮かび上がっている。