シニフィアンの共同代表3人が、放談、閑談、雑談、床屋談義の限りを尽くすシニフィ談。今回のテーマは日本企業における「取締役会について」。5回にわたってお届けします。(ライター:福田滉平)
経営と執行の分離って?
村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):過去のシニフィ談では、ポストIPO、ステージチェンジについて話してきましたが、今回からは取締役をテーマに話してみたいと思います。
取締役については、「社外取締役が何人います」など、数字で語られることが昨今は多くなってきたけど、「結局、運営とかどうやってんの?」といった実態は、なかなか外部から見えにくい。単なる数合わせではなく、会社の経営にとって取締役はすごく大事で、その中身がより重要なはず。これが今回、取締役をテーマにしようと思った背景の1つです。
小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):以前、上場企業の取締役の方々と「他社がどうやっているのか知らないから、取締役会は我流になりやすいよね」と話したことがありました。
アメリカでは社外取締役が多数いるうえに経営者の流動性も高いから、「よその会社ではこんな感じ」という風にスタンダードが共有されていくんだけど、日本は社外取締役の普及が遅かったので、経営会議の延長として実施されてきたパターンが多いと思うんです。
その結果、ともすると屋上屋を架す感じになっていて、「経営会議もあるけど、会社法上求められるから、とりあえず形式として取締役会もやっとくか」というような、イマイチ位置づけのはっきりしない取締役会ができてしまったりする。このパターン、取締役会を設置したばかりのスタートアップに多いのはまだしも、フェーズが進んだ企業でも見られますよね。
朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):一般に、ものごとには「守破離」があるわけじゃないですか。でも、特に経営レベルに関しては多くの場合、すべてが我流で、「守」がないんですよね。
じゃあ、ビジネススクールがその役割を担っているかというと、執行寄りのトピックがほとんどですからね。エグゼクティブMBAであれば、取締役が担う経営といったテーマもあるのでしょうが。
村上:今でこそ、ようやく「取締役会は、機関として大事」だったり、「社外取締役の役割って重要だよね」といった話が一般的になってきて、ちょっとずつ経営に対する意識も進歩してきているように思いますが、まだ、過渡期といったところでしょうか。
小林:難しいのは、「経営と執行の分離」という言葉はみんな知ってるんだけど、実のところ何が「経営」で何が「執行」かというのが綺麗にすっぱり切れるもんでもないってところじゃないですか。
朝倉:人によって、「経営」の言葉の意味も違うんですよね。定義の曖昧さという点では、「戦略」に似ているところがある。経営コンサルタントに「戦略」の定義を聞いても、ファームや人によって言うことが異なりますしね。それと同じくらい、「経営」って言葉もあやふやなんじゃないでしょうか。