まさかの幕切れに未明の日本列島が涙した。開催中のワールドカップ・ロシア大会で、開幕前の不振をはね返す快進撃を続けてきた西野ジャパンが、日本時間3日未明の決勝トーナメント1回戦で強豪ベルギー代表と激突。後半開始直後の連続ゴールでリードを奪いながら優勝候補の猛反撃を食らい、同点で迎えたアディショナルタイムに発動された、電光石火のカウンターから悪夢の逆転ゴールを奪われた。2大会ぶり3度目の挑戦にして、またもやはね返されたベスト8の壁。高度な戦術が凝縮されたカウンターを含めて、後半の試合展開の中でFIFAランキング3位のベルギーに見せつけられた、ほんのわずかに映るようで実は大きな「差」が、日本サッカー界をさらに前進させていく糧になる。(ノンフィクションライター 藤江直人)
ベルギー代表の「電光石火のカウンター」に
ベスト8への道が閉ざされる
時間がほとんど残されてない土壇場で、ベルギー代表は逆転ゴールへと至る「絵」を明確に描き、ロストフ・アリーナのピッチ上にいた全員で瞬時に共有。電光石火のカウンターを発動させた。
4分間が表示された後半アディショナルタイムも、3分半が経過しようとしていた。日本代表が獲得した左コーナーキック。MF本田圭佑(パチューカ)が放ったキックは、199cm、91kgのサイズを誇る絶対的守護神、ティボー・クルトワ(チェルシー)に難なくキャッチされた。
次の瞬間、クルトワは間髪入れずにハンドスローの体勢に入る。ターゲットはすでに右前方でスプリントを開始していたケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)。プレミアリーグで2年連続アシスト王を獲得している司令塔が、ドリブルをどんどん加速させて中央突破を図る。
しかも、デ・ブライネに連動するように、ベルギーの選手たちが日本陣内になだれ込んでくる。日本から見て左サイドをDFトーマス・ムニエ(パリ・サンジェルマン)が、右サイドをMFナセル・シャドリ(ウェスト・ブロムウィッチ)とFWエデン・アザール(チェルシー)が駆けあがってくる。
さらにはゴール前の守備に参加していなかった190cm、94kgの怪物FWロメル・ルカク(マンチェスター・ユナイテッド)も、左サイドへ一度開いてデ・ブライネのドリブルコースを開けてから、斜め右前方へ脅威をまき散らしながら迫ってくる。一方の日本は吉田麻也(サウサンプトン)、昌子源(鹿島アントラーズ)の両センターバック含めて、実に7人が敵陣の奥深くにいた。