カメラの低価格化や東京五輪が
防犯カメラ普及の後押しに

 その後、通勤列車への防犯カメラ設置は、乗客のプライバシーの問題や設置コストなどの問題などがあり、東海道線のグリーン車と埼京線以外に波及することはなかった。

 ところが、前述したように2016年3月、東急電鉄が全車両に防犯カメラを設置する方針を発表して以降、ここ2年で急速に防犯カメラの設置が増えている。その背景としては、高画質カメラの価格が大幅に低下したことや、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会に向けたテロ対策・セキュリティー強化の要請も大きいようだ。

 テロ、殺人、放火から車内迷惑行為、果てはつり革泥棒まで、ありとあらゆる犯罪への効果が期待されている車内防犯カメラだが、利用者にとって一番身近で切実な問題が「痴漢」だろう。

 警視庁によると、2017年に都内で発生した強制わいせつ約700件のうち、約16%が電車内で発生している。また迷惑防止条例違反約1750件のうち、51%が電車内、20%が駅構内で発生しており、全体の3割が午前7時から9時までの通勤通学時間帯に集中しているという。

 2010年に警察庁が実施した調査によると、三大都市圏で電車を利用して通勤・通学している16歳以上の女性のうち、約14%が過去1年間に痴漢被害を受け、そのうち9割近くが警察に通報・相談しなかったと回答していることから、実際の痴漢件数は発表数字の何倍にも上るだろうことが推測される。一方、男性の6割が痴漢に間違われることに不安を感じている。

 調査では電車内への防犯カメラ設置についても尋ねている。全体の48%が「電車内の防犯カメラはプライバシー侵害になると思う」と回答しながらも、84%が設置に賛成するなど、痴漢対策の最終手段として期待が寄せられていることが分かる。