「モノが売れない時代になった」と言われて久しい。しかし、それでも常に行列の絶えないお店があり、成長し続ける会社があり、結果を出し続けるビジネスパーソンがいる。商品の「値段」や「質」がほとんど変わらなくても、売れる人と売れない人、繁盛しているお店とそうでないお店がある。これは、なぜなのか?

本連載では、プルデンシャル生命2000人中1位の成績をおさめ「伝説のトップ営業」と呼ばれる川田修氏が、あらゆる仕事に通ずる「リピート」と「紹介」を生む法則を解き明かした話題の新刊『だから、また行きたくなる。』から、内容の一部を特別掲載する。(構成:今野良介)

まず、下の写真をご覧いただけますか?

なぜ、靴に「毛布」が掛けられているのか?

これは、東京・品川にある「ゆらしラボ」という治療院で撮ったものです。

数年前の冬、私はぎっくり腰で腰を痛め、治療院を探していました。整形外科、マッサージ、接骨院など、あちこち行ってみましたが、どうにも良くなりません。そんなときにインターネットで見つけたのが、この「ゆらしラボ」でした。

ここで行う「ゆらし療法」は、器具や薬を一切使わず手技だけで痛みの原因を取り除くもので、医療先進国ドイツの医師も認め、海外でも広まっている療法だといいます。痛いことが大の苦手な私は、わらにもすがる思いで訪ねました。

すると、軽く触って動かす、柔らかくなでる、やさしく引っ張るという、まさに一切痛いことをしない「ゆらす」だけの治療で、本当に痛みがなくなったのです。

「痛いことをしないでゆらしただけで治るなんて……。ありがとうございました!」

そう感謝の気持ちを伝えると、院長さんは、こう説明してくれました。

「痛みの原因が炎症にあると考え、患部をアイシングする方が多いのですが、それは大きな誤解なんです。冷凍庫にお肉を入れているのと同じで、長く冷やしすぎると筋肉が固くなって血行を悪くさせてしまいます。そうではなく、軽くなでたり、触ったりして、硬くなった筋肉を温めて、患部の血行を良くすることが大切なんです」

私は学生時代にサッカーをやっていた頃から、どこか痛くなると、冷やせばいいと思っていましたが、痛みを麻痺させるだけで、症状が治るわけではなかったのです。

さて、この記事でお伝えしたいことは、ここからです。

なぜ、お客さまの靴に
「毛布」をかけたのか?

新しい感覚に感激して帰ろうとしたとき、私は「えっ?」と驚きました。
靴を履こうとしたら、なぜか靴が温かいのです。

「なぜ温かいんですか?」と聞くと、「せっかく温まった身体を冷やさないように、お預かりした靴を温めているんです」とのこと。

「どうやって?」と聞いて見せてもらったのが、冒頭の光景でした。

下駄箱の靴に小さな毛布のようなものがかけられていて、下に敷かれている小さなカーペットを触らせてもらうと、じんわり温かい。小さな電気カーペットの上に靴を置き、その上から毛布をかけていたのです。

お客さまが身体を冷やさないように、こんな工夫まで……と、私が驚いていると、「どうぞ、これをお使いください」と、これまで見たことのない、ちょっと変わった靴べらを渡されました。

下の写真をご覧ください。

腰痛を持つ人が、腰を曲げなくても靴が履けるように

柄の部分に、ちょん、と出っ張っている部分がありますよね。
この出っ張り、何だと思いますか?

靴べらを使うと、ズボンの裾(すそ)が靴の中に入ってしまうことがありますよね。
それを直そうとすると、腰を曲げなくてはいけません。
腰痛の人にとって、腰を曲げることはつらいものです。それを防ぐため、出っ張りに裾を引っ掛け、ズボンの裾が靴に入らないように作られた特別な靴べらだったのです。

私は腰を曲げることなく、温められた靴を履いて帰途に着きました。
身体だけでなく、心も温かくなっていました。

その後も、身体に痛みが出ると、そこに通うようになりました。不思議なご縁で、今では、その治療院の採用や従業員の教育について、私がアドバイスをさせていただくようになっています。

「普通」をちょっとだけ超える仕事が人を集める

さて、このサービスについて、あなたは、どう思われますか?
「わかる! すごい!」と感心されたでしょうか。
「えっ、そんなことまでするの……」と驚かれたでしょうか。
「で、それが何?」と、疑問に思われた方もいるかもしれません。

いずれにしても、「普通じゃない」と感じたのではないでしょうか。

拙著『だから、また行きたくなる。』では、こうした「ちょっとした工夫」で、私自身が心を動かされ、実際にたくさんのお客さまが集まっているお店やサービスを、一流ホテルから、知られざる小さな飲食店まで、50以上、写真入りで紹介しています。

靴に毛布をかけることは、やろうと思えば誰でもできることです。

そんな、ある意味すごく簡単なことが、私の心を動かして、「あそこは、ほかと違う」「またあのお店に行こう」という気持ちにさせたのです。

ここに、お客さまの「また行きたい!」や「誰かに紹介したい!」を生む秘密があるのです。