自社の土地・建物を有効活用してキャッシュフローの確保や経営の効率化を実現するCRE戦略(企業不動産戦略)。財務的課題を解決するための方策ととらえられがちだが、実は企業のイメージやブランド力を高めることにも役立つという。CRE戦略の最新事情について一般財団法人日本不動産研究所に聞いた。

ポストバブルで変化、CRE戦略のトレンドを専門家が解説

時代とともに変わってきた
CRE戦略の目的と意義

 国土交通省が2008年4月28日に公表した「CRE戦略を実践するためのガイドライン」によると、CRE戦略とは、「企業不動産について『企業価値向上』の観点から経営戦略的視点に立って見直しを行い、不動産投資の効率性を最大限向上させていこうという考え方を示すもの」と定義されている。

「少し前までのCRE戦略は、企業の格付けや信用力を高め、資金調達を有利にするという財務的な目的で行われるのが一般的でしたが、時代の変化とともにCRE戦略の目的や意義は大きく様変わりしています。ROE(自己資本利益率)重視の企業経営が主流になってきた近年、本業の損益のみならず、不動産売買の収益や管理コストにも目が向けられるようになってきました。そのため、CRE戦略が企業経営において重要な位置を占めるようになっているんです

ポストバブルで変化、CRE戦略のトレンドを専門家が解説日本不動産研究所 資産ソリューション部 中島徳克次長

 そう語るのは、日本企業のCRE戦略に詳しい一般財団法人日本不動産研究所 資産ソリューション部の中島徳克次長である。

「日本では1990年代初めのバブル崩壊による不動産価格の下落や、国際財務報告基準(IFRS)などの会計制度の変更によって、含み損の減損処理が求められるようになりました。その結果、財務上の問題を解決する手段としてCRE戦略に取り組み、資金調達につながる格付けや信用力を高めるために遊休地や非効率な不動産などの売却を進める企業が増えたわけです」(中島次長)