「どんな時にも人生には意味がある。未来で待っている人や何かがあり、そのために今すべきことが必ずある」ーー。ヴィクトール・E・フランクルは、フロイト、ユング、アドラーに次ぐ「第4の巨頭」と言われる偉人です。ナチスの強制収容所を生き延びた心理学者であり、その時の体験を記した『夜と霧』は、世界的ベストセラーになっています。冒頭の言葉に象徴されるフランクルの教えは、辛い状況に陥り苦悩する人々を今なお救い続けています。多くの人に生きる意味や勇気を与え、「心を強くしてくれる力」がフランクルの教えにはあります。このたび、ダイヤモンド社から『君が生きる意味』を上梓した心理カウンセラーの松山 淳さんが、「逆境の心理学」とも呼ばれるフランクル心理学の真髄について、全12回にわたって解説いたします。

どんな仕事をしていても、仕事に臨む姿勢次第で人生に意味は満ちてくる。

 

なにをして暮らしているか、どんな職業についているかは結局どうでもよいことで、
むしろ重要なことは、自分の持ち場、自分の活動範囲において
どれほど最善を尽くしているかだけだということです。

『それでも人生にイエスと言う』(V・E・フランクル[著]、山田邦男 松田美佳[訳] 春秋社)

人生に意味が満ちる「3つの価値」

 人には、自分の人生をできるだけ意味あるものにしたいと欲する「意味への意志」があります。意味を感じながら生きたいと願う存在が人間です。

 では、その意味は、どうすれば満たされるのでしょうか?

 フランクルは人生を意味で満たすための「3つの価値」を提示しています。それが「創造価値」「体験価値」「態度価値」です。

 「創造価値」とは主として、自身の活動を通し何かを創造することで実現される価値です。働くことは、この世界に価値を創造することであり、労働とは「創造価値」を生み出す源泉です。労働といっても会社で働くことばかりではありません。主婦であっても家庭における家事や子育ては一流の労働であり、それは立派な価値の創造となります。

 「体験価値」とは、人生における様々な体験を通して実現される価値です。創造価値は、人間が主体になって「この世界に」創り出す価値であれば、「体験価値」は、「この世界から」受け取る価値です。

 人は、自然の神秘にふれたり、誰かと恋に落ちたり、音楽や映画に深く感動したり、人生における多種多様な体験を通して「価値」を受容します。その時の感動体験は、「意味がある」と実感できるものです。

 「態度価値」とは、置かれた状況でその人の「とる態度」によって実現される価値です。人生には、時に、神様を呪いたくなるような辛い出来事が起きます。逆境にあって、すねてくさって酒に走り、人生を棒にふってしまう人がいます。一方で、自分を見捨てることなく未来を信じて、捲土重来を期して地道な努力を続ける人がいます。その努力そのものに価値があるのです。

 ですので、どんな状況に陥っても、どのような態度をとるかによって人生を意味で満たすことができます。これが「態度価値」です。

 以上「3つの価値」について簡単に説明しました。本稿では、ここから「創造価値」について掘り下げ、「体験価値」と「態度価値」は、次回以降で解説いたします。では、「創造価値」についてです。