どんな姿勢で仕事をしているかが大切

 大企業だとか有名企業だとか、社会的ステータスにやけにこだわる人がいます。ですが、大きな有名企業で働いていても、不平不満の塊となって持てる力を出し惜しみにしたり、手抜きばかりしたり、悪口・陰口を叩き他人の足を引っ張ることに喜びを感じたりしていたら、その人の人生に意味は決して満ちてきません。それはひどく寂しい人生です。

 反対に、小さな無名の会社であっても、自分の仕事を使命だと認識し、持てる力を常に出し切ろうと最善を尽くす人の人生は、意味に満ち溢れ、創造性にあふれた人生を送っているといえます。

 フランクルは、こんな言葉を私たちに遺しました。

「職業と家庭が与える具体的な使命を実際に果たしている一人の単純な人間は、その「ささやかな」生活にもかかわらず、数百万人の人々の運命をペンの一走りで決定できても、その決定において良心なき「偉大な」政治家よりも偉大であり高貴なのである」※3

 市井でささやかに暮らす名もなき人々の献身的な働きが、この世界の宝です。それらの人々の良心に基づく高貴な働きが、真の創造価値であり、この世界を前進させています。

 鎌倉期の僧侶最澄の「山家学生式」に、こんな言葉がありました。

 「一隅を照らす、此れ、則ち、国宝なり」。

 一隅とは、自分の置かれた場所のことです。最善を尽くして自身が輝き、その場を明るく照らせば、それが国宝といえるほど価値あることです。これは、フランクルの「創造価値」に通底する思想であり、国を越え時を越え、真理の存在を感じさせてくれる言葉です。

 どんな会社に勤めているか、どんな仕事をしているかではなく、どんな姿勢で仕事をしているか。それが大切です。仕事に臨むその姿勢によって、どんな仕事をしていても人生に意味は満ちてきます。

 フランクルの教えに学び、今、目の前にある仕事に全力を尽くしましょう。

◇引用文献
※1-2『それでも人生にイエスと言う』(V・E・フランクル[著]、山田邦男 松田美佳[訳] 春秋社)
※3『死と愛 実存分析入門』(V・E・フランクル[著]、霜山徳爾 [訳] みすず書房)