これは、「聴衆に満足してほしい」という意識の裏返しでもあるので素晴らしいことだと思います。そういう人に対して、敵意を持つ人は少ないと思います。みんな味方になってくれるはずです。自分が聴衆になった時、意味もなくステージの上の人に敵意を持ちませんよね?むしろ「どんな話をするんだろう?」と興味を持って聞くことのほうが多いのではないでしょうか。

 そう考えると、聴衆は決して敵対する相手ではありません。緊張しているなら、それを相手に伝えれば、より一層相手は精神的に自分に近づいてくれることでしょう。

 より相手との精神的な距離を縮めるためには、視線を合わせて話すのが効果的です。ただ、この「視線を合わせる」というのが大の苦手という人も多いのではないでしょうか。

 ちなみに、プレゼンの研修などで「聴衆の顔を見るのが怖ければ、自分の顔を見ている相手の、おでこや鼻のあたりを見ればいい」とアドバイスをする人がいますが、私はこれには賛同しません。おでこや鼻のあたりを見て話すと、視線の動きが不自然になったり、目が泳いだりするからです。できるだけ目を見て話ほうが、結果的に説得力が増します。相手が複数いるなら1人当たり1秒程度視線を合わせれば十分です。次の人に視線を動かしていきましょう。

 視線の移動が苦手という話もよく聞くのですが、そういう方におすすめしたいのが、人のある程度いる場所、たとえば電車の中や駅のホームなどで立っている時に、自分のことを見ていない人の顔を順番に見るという練習方法です。そうすることで、人の顔をテンポよく見るという感覚をつかむことができます。

 聴衆は敵ではありません。あなたの立ち居振る舞い次第で、精神的にぐっと近くに来てくれます。ぜひ相手を味方として認識するところから始めてみましょう。

(日本マイクロソフト マイクロソフトテクノロジーセンター センター長 澤 円)