「幸せなテレワーク」は
口で言うほど簡単ではない

 とはいえ、テレワークを導入すれば、全てがうまくいくというわけではない。「実は、制度を導入しても苦労している企業は多い」(田澤氏)のが現実だ。従来と全く違う働き方をするわけだから、よほどきちんと設計を考えないと職場に制度を根付かせるのは難しい。

 最もありがちな課題が、「テレワークを導入しても、在宅勤務の社員に任せられる仕事がほとんどない」(田澤氏)というもの。総務省の『平成29年通信利用動向調査』によると、テレワークを導入していない企業がその理由を述べた回答は「テレワークに適した仕事がないから」が最も多く、全体の約74%を占めた。

 企業が在宅社員に任せられる仕事の条件は、「切り分けやすいもの」「集中してやる事務的なもの」「情報保護の観点から重要なデータが入っていないもの」などだが、実際のところ、それらの条件を満たす仕事は会社にあまりない。そうなると、在宅社員のための仕事をつくらなければいけなくなり、逆に効率が悪くなってしまう。

 職場の人間関係にも問題が生じやすい。管理職は在宅社員に対して「きちんと仕事をしているだろうか」と不安を感じる。同僚の中には、在宅社員の代わりに上司の頼み事や会社にかかってくる電話への応対などが増え、不公平感を募らせる人も出てくる。

 微妙な雰囲気を感じて在宅社員も肩身が狭くなり、せっかくのテレワークにもかかわらず頑張り過ぎて過重労働をしてしまう人もいる。出社している社員も、「上司に睨まれて出世に響きそうだ」と在宅勤務を忌避するかもしれない。これでは「不幸せ」なテレワークであり、導入する意味がない。

 こうした課題を克服して、働き方改革を成功させるには、「今の仕事をテレワークでできるように、仕事のやり方を変えて行く発想転換が必要」(田澤氏)である。

 たとえば、普通のビジネスパーソンは「仕事道具」と「仕事仲間」が会社にある。だから出社しないと仕事も相談もできないし、家で残務処理をするときは「家でできる仕事だけ」を持ち帰る。これは「仕事切り分け型」の働き方だ。

 それに対して、これから目指すべきテレワークは、「仕事道具」と「仕事仲間」を全てクラウド上に置く「いつもの仕事型」である。こうすればクラウドを介して、時と場所を選ばず、普段と変わらない内容の仕事ができるようになる。上司や同僚に迷惑をかけないし、突然の天災にも対応できる。