軍に対する不満や抵抗感は
長い間蔓延してきた

 ここから本稿で筆者が検証したい本題へと入っていくが、最近、筆者から見て“軍部の暴走”を招きかねないリスクを内包する事態が発生している。それは冒頭に出てきた元空軍幹部の感想や動向を裏付けるものであるとも言える。

 6月11日、党中央弁公庁、国務院弁公庁、中央軍事委員会弁公庁の連名で『軍隊が全面的に有償サービス業務を停止することを深く推進するための指導意見』を発表した。これは習近平政権成立以来もくろまれ、取り組まれてきた軍隊・軍事改革の一環であり、『意見』の発行をもって、解放軍は今年度末までにすべての営利を目的とした企業運営やサービス提供を停止することが正式に義務付けられることになった。

 これは“反腐敗闘争”と同様、軍隊に対する“粛清”プロセスだと解釈できる。

 習近平は『意見』を「共産党が新時代において強軍目標を実現し、世界一流の軍隊を全面的に作り上げるための重大な戦略的措置であり、国防・軍隊改革を深化させるための重要な内容である」としている。

『意見』発行の背後には共産党の解放軍への掌握と支配をめぐる意図や動機が如実に反映されるわけであるが、そこには軍隊の腐敗を防止すること、軍隊への社会的信用を回復させること、国有資産の流出を防止すること、そして習近平が主張するように軍隊が本来の任務である「戦争に勝つこと」を確固たるものにするための業務に集中することなどが含まれる。

 筆者自身、今回の措置には社会の安定や合理的分業という意味で、ポジティブなインパクトが見いだせると考えている。

 以前広東省恵州市で、ある民間中小企業が正規の契約を通じて自ら権限を持っていた数千坪の土地が知らぬ間に不当に持っていかれ、マンション建設などを含め強引に開発されてしまったケースを視察したことがある。明らかな不当行為であり、地元の政府も同企業に同情し、対応策を練っていたが、相手が武装警察、すなわち軍部が経営する企業(総経理は上級大佐)であったこともあり、結局“為す術なし”という感じであった。

 このように、軍隊が社会的特権を乱用して、不当なビジネスを行ったり、莫大な利潤を獲得するといった状況は早くから中国社会における“公然の秘密”となっており、民の軍に対する不満や抵抗感は長い間蔓延してきたと言える。