シャープを傘下に持つ台湾の鴻海精密工業が、米国ウィスコンシン州で新工場の建設を開始した。トランプ米大統領が絶賛する「100億ドル(約1兆1000億円)」の巨大工場。だが巨額投資のリスクが顕在化しており、先行きは不透明さを増している。(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 村井令二)
「100億ドルの投資で、地元に1万3000人の雇用を生み出す。ハイテクで待遇の良い高付加価値の仕事だ」
米国ウィスコンシン州にある自然豊かな街、マウントプレザントの広大な敷地で6月28日に開かれた起工式。鴻海の郭台銘会長が雇用創出を強調すると、主賓として参加したトランプ米大統領は「彼こそ世界で最も優れたビジネスリーダーの一人だ」と持ち上げた。
「100億ドル」は、海外企業の米国工場への投資としては史上最大級。2人の親密ぶりが強調された華やかなセレモニーとなったが、それを冷ややかに見詰めていたのが液晶業界の関係者だった。
「それだけの大風呂敷を広げて、あの場所に一体何の工場を建てるのか」──。
鴻海がウィスコンシン州に100億ドルを投じる液晶工場を建設すると発表したのは昨年7月26日(米国時間)。当初は、世界最先端の「第10.5世代」と呼ばれる巨大ガラス基板サイズを採用した液晶パネル工場を建設する計画だったが、すでにその構想は凍結されている。