普通の感覚を持ち合わせた人ならば、見ず知らずの被災者、場合によっては遺族に話を聞かせてくださいとお願いするのに気が引けるのは当然だ。「余計なお世話。放っておいてくれ」と言われてしまえばそれまでだが、記者には「伝える」という義務がある。だから筆者はただ「何が必要ですか?」「何かお困りのことはありませんか?」「何かお伝えしたいことはありませんか?」を問うだけで、そうした流れで「話を聞いてくれ」と言う被災者がいれば言葉に耳を傾け、語るに任せて相づちを打つことだけを心掛けていた。

「そんなことを言っても、傷心の遺族、復旧作業で多忙の被災者が取材に応じるはずがないだろう。やはり無理に聞き出そうとしているのではないか」という疑問があるかもしれない。

 しかし、吐露することで心にため込んだ思いを吐き出すことができたり、気分転換になったと語ったりする遺族や被災者は意外に多かった。「話を聞いてくれてありがとう。いい記事にしてね」と感謝されたり、逆に「頑張ってね」と激励されたりすることもあった。

 そして何より、報道によって情報が伝わり、被災地に救援物資が届いたり、ボランティアが駆け付けたりしている。もちろん、こうした支援は新聞やテレビによって被害の情報が伝わり、被災地以外の地域の方々が行動を起こすわけで、自治体関係者や被災者に直接の利益をもたらしているのはまぎれもない事実である。

求める声、伝えたい思い

 一方で「情報が足りない」という批判もある。