「モノが売れない時代になった」と言われて久しい。しかし、それでも常に行列の絶えないお店があり、成長し続ける会社があり、結果を出し続けるビジネスパーソンがいる。商品の「値段」や「質」がほとんど変わらなくても、売れる人と売れない人、繁盛しているお店とそうでないお店がある。

これは、なぜなのか?

本連載では、プルデンシャル生命2000人中1位の成績をおさめ「伝説のトップ営業」と呼ばれる川田修氏が、あらゆる仕事に通ずる「リピート」と「紹介」を生む法則を解き明かした話題の新刊『だから、また行きたくなる。』から、内容の一部を特別掲載する。(構成:今野良介)

飲み終わったコーヒーカップの「その後」

私は、営業活動で訪れたお客さまのオフィスを立ち去る際に、必ず、出していただいたコーヒーカップを、相手のカップに寄せて帰るようにしています。

信頼される人は「やったほうがいいこと」を怠らない。そっと、相手のカップに寄せておく。

「なぜ、そんなことをするのだと思いますか?」

講演でそう質問をすると、100%の人がこう答えます。

「片付けやすいように」

答えられなかった人は、今まで一人もいませんでした。しかし、「じゃあ、みなさんは実際にやっていますか?」と聞くと、沈黙してしまいます。

つまり「なぜそれが良いことか?」は誰もが理解しているけれど、実際にカップを寄せて帰っているかというと、そうではない。

体力を使うわけでもない。カップを寄せることは、とてもささいで、簡単なことです。まずは、あたりまえのことをきちんとするだけでも、「この人はちょっと違う」「信頼できる」と感じてくださる人が、たくさんいます。

なぜなら、ほかの人がやっていないから。

人の頭の中には「普通の基準」がある

私の頭の中には、常に「レベル10」と「レベル11」という考え方があります。
レベル10とは、その職業における一般的な水準。
つまり、お客さまが「普通だな」と感じるサービスレベルのことです。

重要なことは、この「普通だな」という感覚が、大多数の人の頭の中に共通認識としてあるということです。

そして、お客さまの頭の中にあるレベル10を、ほんの少しだけ上回ること。それがレベル11です。頭の中に「普通はこういうもの」というレベル10の感覚があるために、ほんの少しの違いでも、お客さまは敏感に感じ取るのです。

私は、すべての職業に、このレベル10とレベル11があると思っています。

私たちは、常に「サービスを提供する側」と「サービスを提供される側」という2つの顔をもっています。「提供される側」にいるときは、生活の中で、日常的にレベル11を感じ、心を動かされる経験をしています。でも、「提供する側」の立場になると、それを忘れてしまいがちになるのです。

拙著『だから、また行きたくなる。』では、小さなお店から大企業まで、「レベル11」を実践して、お客さまが次から次へと集まっているサービスを、50以上紹介しています。

ここでは、もう1つ、かつて、私がやっていたことをご紹介させていただきます。

「不在着信」があったとき
あなたはどうしていますか?

以前、ある方から、会社にご連絡をいただきました。秘書に聞くと、携帯電話の番号とお名前に記憶がありませんでした。だから、私のお客さまではありません。

でも、知らない人からの電話だからといって、放置するわけにはいきません。何か大事な用件かもしれません。私は外出先にいたのですが、急ぎの用かもしれないので、携帯電話で折り返し電話をしました。しかし、お相手の方は電話に出ませんでした。

そのとき、ふとした考えが頭をよぎりました。