Aさんは妻の負担をなくしつつ己の欲望を満たすため、スマホ片手にトイレにこもってはせっせと処理を施した。妻の目下の関心事はわが子に集中していて、育児を手伝おうとしたAさんが邪魔者扱いされることも少なくなかった。ちょうど仕事も壁にぶち当たっている折で、「『自分はなんのために生きているんだろう』と毎日自問自答していた」とAさんは語る。

居場所を求めて……
同僚との不倫に「助けられた」

 あるプロジェクトの立ち上げにあたって他部署と連携することになり、Aさんは隣の部署に所属する1歳年下の女性社員とチームを組んで仕事をする機会が多くなった。

 で、ありがちな話であるが、仕事について語らうための飲みなども増えて、やがて深間となった。最初の一線を越える直前のAさんを支配していたのは罪悪感と恐怖だったが、一歩踏み出してしまえばあとは快楽がまさった。

「不倫をする前は会社にも家庭にも自分の居場所がない気がして、『自分は本当に不必要な存在なのだな』と。けれども彼女(不倫相手)は僕を仕事と人柄の面ですごく評価してくれていて救われました。一時期はまんま“生ける屍”でしたが、彼女に『助けられた』といっていいと思います」(Aさん)

 結果的に不倫によって絶望から復活できたAさん。

 しかし不倫はあくまで不倫に過ぎない。“美談”として昇華するには業が深すぎる行いである。Aさんに「罪悪感はあるのか」「不倫してよかったと思っているか」「奥さんや子どもがかわいそうだと思うか」などについて尋ねた。

「罪悪感は当然ありますが、関係が続いていくうちにだんだんと薄れていっていることは確かです。それだけ今の関係は心地いい。

 不倫はしないに越したことはなかったかもしれませんが、『できてよかった』と思う部分は大きいです。無気力な暗黒期を思えば、砂上の楼閣かもしれないけれども今の生活の方が圧倒的に充実しています。

 もし不倫が離婚の引き金になったら、子どもには心底申し訳なく思うでしょう。僕一人がふんばっていれば子どもに不自由を与えることなんて起こりえなかった。不倫している人間が言うのもおこがましいですが、子どもには一片の非もないので、できることなら守りたいと思います。

 妻にも申し訳ないという思いはあります」

 やや含みを持たせた言い方が気になったので、もう少し突っ込んだ本音を聞かせてもらうことにした。

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