「運動中に水を飲むと体がだるくなる」という理由を耳にした記憶があるが、隠れて飲んだ水のおかげでリフレッシュできていたので、根拠のないスパルタ精神論だったのは間違いない。それを信じて水分補給をしなかった同級生は、実力があるのに練習中にパフォーマンスを十分に発揮できなかった。結果、実力も評価してもらえず、試合にも出してもらえなかった。

 今では笑い話にさえなっている「肩を冷やすから野球部は水泳禁止」も、結局ただの迷信だった。

 それでは、三十数年前は水分補給をしなくても選手や応援団は熱中症にならなかったのだろうか。そんなことはない。精神論でクリアできる問題ではないし、練習中に倒れる部員はいた。ただ、当時は「日射病」と呼ばれて直射日光が原因とされ、ただ日陰で寝かせるという措置が取られただけだった。

 大会での開会式でも選手のほか、ブラスバンドや応援団らが倒れる事態はあったが、「貧血」で片付けられていた。昨年の甲子園開会式では、滝川西(北北海道)の先導役としてプラカードを持つ市立西宮の女子生徒が突然倒れる騒動が発生。1972年から連載され、6月28日に完結した人気野球漫画「ドカベン」でも、高校野球編で女子生徒が倒れそうになり、キャプテンの岩鬼正美が抱きかかえるシーンがある。

 第100回を迎える甲子園では前述の通り、開会式中の水分補給を勧める検討をしている。画期的な試みと思う。一方で、甲子園大会の開催時期について、大阪府の松井一郎知事が「高校野球は春と秋開催にすべき」とツイートし、7月19日の記者会見で「命の方が大事」と発言するなど開催時期の見直し論があるのは事実だ。

 そうは言っても、勝ち進めばそのまま大会に専念するので、高校野球をはじめ中高生の全国規模なスポーツ大会は、スケジュール的にも長期間の休みが取れる夏休み期間でないと、現実的には開催が難しい。授業をすっぽかして、というわけにもいかず、やはり高校野球は「灼熱の夏」に開催するしかないのだ。選手、そして応援団ら関係者には熱中症対策に万全を期し、悔いがないように全力を尽くしてほしいと願う。