自動車貿易は複雑な流れだ。完成車だけ見ても、日本メーカーが米国内で生産・出荷するケース、日本から完成車を米国に輸出するケース、カナダ、メキシコなど第三国から米国に輸出するケースなど、さまざまだ。

 大和総研のエコノミスト、小林俊介氏によると、米国で販売された日本車664万台(2017年実績値)のうち、米国内での生産が335万台、日本からの輸入が174万台、第三国からの輸入が155万台になるという。

 このうち、日本からの輸入にかかる関税率は乗用車で2.5%。トランプ大統領が言うように20%引き上げられた場合は、約1兆円の追加負担が生じる。

 また「第三国からの日本車」の大半は、北米自由貿易協定(NAFTA)を構成するカナダ、メキシコからの輸入とみられる。現在は両国からの対米輸出は関税ゼロ。トランプ大統領はNAFTAの再交渉を命じ三国間で協議が続いているが、進展は不透明な状況だ。もしNAFTA再交渉が失敗すれば、メキシコ、カナダ両国からの輸入にも20%が課される可能性がある。

 小林氏は「仮に第三国分にも20%の関税が追加されることになれば、日本車の輸出への影響は1.7兆円から1.8兆円。これに自動車部品などへの影響も勘案すると、約2兆円程度の関税を追加で負担しなければならなくなる。直接の輸出や現地生産もあるため波及経路は複雑だが、乗数効果を考えて最終的に日本経済には4兆円程度のマイナスの影響が出る」と試算する。

 4兆円といえば、かなり大きな額だ。

自動車で「脅し」
日米FTA締結を狙う思惑?

 トランプ大統領には、自動車で脅し、別の分野で成果を獲得するという意図が見え隠れする。

 それに応じるかのように、ドイツのメルケル首相は7月5日の記者会見で、現在10%となっているEUの自動車関税について引き下げがあり得ることを示唆した。

 今のところ、これ以上の具体的な動きにはなっていないが、ディールを好むトランプ大統領に配慮したのではないかと受け取られている。

 では、自動車への追加関税に関して、日本の場合は何が米国との「ディール」の材料になるのか。

 今のところ、新たに日米間で開始される「自由(free)」「公正(fair)」「相互的(reciprocal)」の頭文字をとった「FFR協議」が候補として考えられる。