星野仙一の野球人生を切り拓いた「人を見る目」のすごさ写真はイメージです Photo:PIXTA

要約者レビュー

 2018年1月4日、中日ドラゴンズで現役生活を送り、同チームや阪神タイガース、東北楽天ゴールデンイーグルスの監督を務めた星野仙一氏が、膵臓がんのため亡くなった。星野氏が野球界に残してきた偉大な足跡はあまりに大きく、今後の球界に彼ほどの人材は現れないのではないかともいわれている。

 本書は2002年に刊行された書籍をもとに、その後の五輪野球監督、東北楽天ゴールデンイーグルス監督時代のエピソードを追加。東北楽天ゴールデンイーグルスが2013年に初の日本一を勝ち取ったところまで、あますところなく収録している。さらに著者が各誌で描いてきた野球人・星野仙一の人生についての記事も、再編集されたうえで掲載されており、まさに「決定版」といえる内容だ。

 著者は長年野球界を追い続けたスポーツライター、永谷脩氏。星野氏とは学年が同じなど共通点も多く、野球選手としてマウンドに立っていた頃から、監督として活躍するにいたるまで、星野氏の野球人生とその哲学を文章にしてきた。選手からの信頼も厚い人物だったが、残念ながら2014年に永眠。

 現場とメディアという違いはあるものの、野球に人生をかけた二人の男の物語が、この一冊には詰めこまれている。人を大切にしつつ夢を実現する星野氏の姿勢と哲学は、野球という枠を超えて、私たちの道標となってくれるだろう。

●本書の要点

(1) 野球界に大きく影響を与えた星野氏が、人の気持ちを見抜く眼力と本質的なやさしさを兼ね備えるようになったのは、ずっと支えてくれた母の姿と言葉があったからである。
(2)星野氏は監督就任後、アメとムチを的確に使い分けた。ぬるま湯体質のチームには“クビ斬り”という非情な手段を使いながら、チームを勝利に導く。そして名監督として名をはせた。