国内外で積極的なM&Aを行い、自ら創業した日本電産を世界No.1の総合モーターメーカーに育て上げた永守重信会長。今年3月、京都学園大学を運営する学校法人京都学園(以下、京都学園大学)の理事長に就任し、今度は大学経営に乗り出した。日本を代表する経営者が、教育に懸ける熱い思いを余すところなく語った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 前田 剛)

──どのような経緯で京都学園大学の理事長に就任されたのですか。

aながもり・しげのぶ/日本電産代表取締役会長(CEO) 1944年、京都府生まれ。職業訓練大学校電気科卒業。73年に28歳で日本電産を創業、同社を世界No.1の総合モーターメーカーに育て上げた。2018年3月、京都学園の理事長に就任。 Photo by Masato Kato

 自分で会社を起こし、長年経営に携わってきて感じるのは、会社というのは「人材」が鍵を握るということです。ただ、いい人材というのは世の中にごろごろいるわけではない。だから採用してからの教育が重要になる。つまり最後に行き着くのは「教育」なんです。

 今の日本の偏差値に偏重した教育は、根本的に間違っている。若者を駄目にしている。でもそれをいくら文部科学省に言ったところで何も変わらない。だったら自分で大学をつくって、こうやったら素晴らしい人材が育つということを証明してみせようと思ったわけです。真剣に考え始めたのは還暦を迎えたころでしょうか。

 もともとは、自分で土地を購入し、一から大学をつくって学生を募集して、全寮制で半分は留学生にするという構想で、私財を1000億円ほど投じてやろうと思っていました。

 ところが実際に学校をつくるとなると、会社をつくるのとは違ってさまざまな規制があり、簡単ではない。そんなときに京都学園大の田辺親男理事長(当時)から、「一からやるのは時間がかかる。本学をベースに始めてはどうか」というお誘いを頂き、次期理事長をお引き受けすることにしました。

 日本電産は2030年に売上高10兆円という目標を掲げていますが、それを達成した後、いずれ誰かにこの会社を手渡すときがくる。その後の新たな生きがい、自分の最後の仕事が人材教育だと思い定めています。