ファイナンス思考自体は中高生でもわかるシンプルな話
朝倉 お金について、とかく日本人は歪んで捉えがちです。利益を上げて受け取るお金は、提供した価値の見返りであり、価値の尺度です。得られるお金の総量を上げることが目的の第一になったら本末転倒だけれども、価値の総量をどう上げるか、その評価としてお金をどれだけもらうかを考えるのは、真っ当なことです。
藤野 価値を提供する側も受け取る側も、ウィン=ウィンになるはずですよね。
朝倉 先ほどのWACCとROICのスプレッドの話もそうですが、きちんと投資のリターンを得られていない状態は、価値を破壊しているに等しい、という認識が今ひとつ浸透しきっていない気がします。
藤野 お金の価値の認識も含めて、ファイナンス思考自体は中高生でもわかるシンプルな話で、複雑ではありません。完全に思い込みが邪魔しているんでしょう。日本の大学生がこのファイナンス思考を素直に学んで学生時代から起業すれば、お金もビジネスもまっすぐに捉えられるようになるのではないですか。
朝倉『さらば、GG資本主義』のあとがきに、「この未来を自分たちでつくるんだ」とありましたが、これはファイナンス思考の根幹にある前提を表した言葉だと思うんです。PL脳は、与えられたものを、与えられた期間で調整・管理する発想ですよね。でも、ファイナンス思考は自分たちの意思で価値を作っていくんだという前向きな話だし、若い人たちのほうが親和性も高いはず。究極的には、ロジックではなくて、志や意気込みの話だと思います。だとすると、この本は「自己啓発本」かもしれません(笑)。若い人に昭和を引きずらずに、振り切ってほしい。
藤野 ソリューションは違うかもしれませんが、主体的にキャッシュフローを上げられる人間になって個人のバリューを上げていこう、いきいきとしたビジネスを展開して、自分を発揮できる世界観を広げよう、といった主張は広がってきているなとは感じています。一緒に頑張って布教していきましょう(笑)。
朝倉 そうですね。今日はありがとうございました。